真夏の涼

氷室が生む優しい冷風 兵庫・六甲枝垂れ

六甲枝垂れの地下にある氷室。氷の保冷に電気は一切使っていない=神戸市灘区
六甲枝垂れの地下にある氷室。氷の保冷に電気は一切使っていない=神戸市灘区

神戸市灘区の六甲山山頂近くにある展望台「六甲枝垂(しだ)れ」。天気の良い日には、淡路島や遠く大阪湾の向こうの泉州地域までを見渡せる絶景を楽しめる人気スポットで、展望台内には「風室(ふうしつ)」という快適に涼める部屋もある。冬場に採取した天然の氷を保存した氷室から送られる冷気により、山麓の市街地より10度も低いという。電気を一切使わないエコな〝天然のクーラー〟で涼んでみませんか。

風室は、天井を網目状のドームで覆った展望台の地下にある。室内は総ヒノキ張りで、ヒノキの心地よい香りが漂う。らせん状の階段を下りたところにある円形のベンチに腰掛けると、ベンチの肘置き部分にある送風口からひんやりとした冷気が流れてくるのが分かる。

クーラーの風と違って湿り気を帯びた、やわらかい涼風。いかにも体にやさしいという感じがする。

旧十国展望台跡地に建てられた六甲枝垂れ。絶景と冷風体験を楽しめる=神戸市灘区
旧十国展望台跡地に建てられた六甲枝垂れ。絶景と冷風体験を楽しめる=神戸市灘区
 六甲枝垂れの風室では自然の冷気を体感できる=神戸市灘区
六甲枝垂れの風室では自然の冷気を体感できる=神戸市灘区

市街より10度低く

「この部屋の横にある氷室に風を取り込むことで、電気を使わず自然に循環する仕組みになっています」。運営会社「六甲山観光」の広報担当、大原淳史さんは説明する。

標高約880メートルの展望台は神戸市街地より5度ほど気温が低く、風室の中はさらに5度低い。「真夏でも20度前後を保っている」という。

非公開の氷室を特別に見せてもらった。氷室は2つあり、いずれも幅約1・3メートル、高さ約1・3メートル、奥行き約7メートル。扉の向こう側には大きな氷の塊がぎっしりと詰まっている。

氷は冬の間、展望台にある石造りの棚に雨水をためて凍らせたもので、例年1月にチェーンソーで切り出し氷室内に保存する。今年は約24トンの氷を貯蔵し、扉を開いた7月13日時点で約13トンが解けずに残っていたという。もちろん氷室の保冷に電気は使っていない。

昭和初期まで利用

六甲山の氷室は、明治時代から昭和初期まで実際に利用されていた。山上のため池に厚く張った天然の氷を冬の間に採取・貯蔵し、夏になると切り出して麓まで運び、神戸や大阪で売っていたという歴史がある。氷を運んでいた道は「アイスロード」と呼ばれ、今でもハイキング道として残っている。

かつて、「回る展望台」として親しまれた「十国展望台」の跡地に建てられた六甲枝垂れは、この歴史をヒントに考え出された。

設計者は、いかに建築が地球の一部になるかをテーマにした建築物を追求した建築家、三分一(さんぶいち)博志さん。六甲山に吹く自然の風を氷室へ取り込み、施設内に循環させるというコンセプトの建築がコンペで最優秀賞を受賞。そのまま採用され、平成22年に完成した。

年間3万人来訪

ユニークなコンセプトと外観が受け、六甲枝垂れは年間3万人近い観光客が訪れる人気スポットとなったが、実はメンテナンスが大変なのだという。

「内装に使っているヒノキは、雨風で傷むのでしょっちゅう張り替えなければなりません。ヒノキは奈良・吉野産で、けっこうな出費になります。入場料をいただいてはいるのですが、維持費がかかりすぎてなかなか利益は出ません」と大原さん。

電気は一切使わず自然の力のみで涼をとれるエコさが魅力だが、電気以外のところでお金がかかっている贅沢(ぜいたく)な施設なのだ。

風室の冷風体験は氷室の氷が解けてなくなる8月末ごろまで楽しめる。入場料は「シダレミュージアム」開催中(11月23日まで)は大人、子供ともに500円。営業時間は午前10時~午後9時。無休。問い合わせは六甲ガーデンテラス(078・894・2281)。(古野英明)

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