朝晴れエッセー

片足の教え・8月11日

ミサイルが着弾し建物を破壊する。途方に暮れ泣き叫ぶ幼子。今年2月24日のロシア軍のウクライナ侵攻以来、テレビのニュースなどで見ない日はなく、たくさんの人々が犠牲となっている。これはもちろん戦争である。

昭和40年頃、小学生だった私は戦争を身近に感じたことがあった。夏休みに祖母が私を連れて父の実兄である伯父さんの家に泊まったときのことだ。祖母から、伯父さんは太平洋戦争で爆撃により片足を失ったと聞かされていた。私は物心ついてから伯父さんに一度も会ったことがなく、会う前から怖いイメージができていた。

夕刻、ワイシャツに幅の広いネクタイを締めた、がっしりとした体格の伯父さんが仕事から帰ってきた。想像とは違い、つえを持たず普通に歩いていたが、ギシギシと音がした。

夕飯は皆で卓を囲んだ。伯父さんはチヂミのシャツとステテコに着替え、座敷の一番奥へゆったりと座った。その横には茶色い義足が横たわり、ステテコの裾から〝丸いヒザ〟が見えた。伯父さんは片足がないことを初めて見た瞬間だ。

「隆、気になるか」と突然聞かれ、ビクッとしたのを覚えている。伯父さんは私の様子に少し顔をほころばせて「戦争はこうなるんや」とひざ頭をなでた。

今ウクライナで起こっている現実と、ありがたいことに平和に暮らせている私たち。伯父さんの片足はそれを教えてくれたのかもしれない。


肝月(きもつき)隆 64 大阪市住之江区

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