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(230)味がわからなくなったら

新型コロナウイルス感染症の症状の一つに、味がわからなくなる、というものが流行当初から知られています。変異株によって出現頻度は異なるようですが、オミクロン株が主流の現在でも自覚する人は少なくありません。

60代前半の女性患者さんは1カ月ほど前、コロナに感染し、それ以来、食べ物の味がよくわからなくなっているそうです。料理を作っても味付けがうまくいかず、家族にもおいしくないと言われてしまうと嘆いていました。

コロナでは、半数近くの人に嗅覚や味覚が低下することが報告されており、なかには長い間回復しない人もいます。

長引く嗅覚や味覚の低下について、これまでの報告を評価した研究結果が発表されました。これによると、感染者の5%程度の人に嗅覚や味覚の低下が持続してみられるようです。ただ、時間経過とともに回復していく人が多く、1カ月で70%以上、半年で95%以上の人が回復します。女性であることや嗅覚の低下が著しい人ほど回復しにくい傾向にあるようです。

嗅覚や味覚の低下が現れても、半年以内にほとんどの人が治るといわれれば、それなりに希望は持てますが、これだけ多くの罹患(りかん)者がいると、かなりの人が嗅覚や味覚が戻らないままの生活を強いられているということです。嗅覚や味覚は情動や認知機能と結びついており、これらの低下は抑鬱や認知機能の低下を引き起こす恐れがあります。腐ったものの臭いや味がわからないことは、健康や命を守る上でも危険です。

嗅覚が低下してしまったときには、早くから嗅覚に刺激を与えることが勧められています。具体的には香りの強い花やハーブなどを何種類か用意し、それらを嗅ぎ分けるということを毎日続けます。匂いや味がはっきりとしていて不快に感じない料理をいろいろと試してみるのもよいでしょう。

実は嗅覚障害と味覚障害を分けることは意外と難しいことです。味がわからない、と一口に言っても、甘味や塩味がわからない場合や、風味がわからない場合などがあります。前者は味覚の、後者は嗅覚の障害で起こります。この女性患者さんは、主に嗅覚の障害からきているようでした。大半の人がいずれ回復することや嗅覚のトレーニング法をお話ししたところ、「あまり気に病まないようにして、できることはやってみます」と言って帰っていきました。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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