VRゴーグルで犬と「触れ合い」 激減する学校での動物飼育、愛護の心どう育む 

VRを使った動物愛護教育プログラムんい参加する子供たち=大阪府羽曳野市立西浦小学校(ネスレ日本提供)
VRを使った動物愛護教育プログラムんい参加する子供たち=大阪府羽曳野市立西浦小学校(ネスレ日本提供)

子供たちにVR(仮想現実)を使って動物との触れ合いを疑似体験してもらうプログラムを、大阪府と大手食品メーカー「ネスレ日本」(神戸市)が今年度から始めた。学校での動物飼育が減少し、子供たちが動物と触れ合う機会が少なくなる中で、臨場感あふれるVRの映像を通じて動物愛護の心を育んでもらう狙いがある。

6月中旬、大阪府羽曳野市立西浦小学校。「犬に触ってみましょう」-。VRゴーグルを着用した6年生たちが聞こえてくる音声に促され、宙に手を伸ばした。ゴーグルに映る犬は、なでられてうれしそうな反応を見せる。児童たちはゴーグルを外すと、「映像なので怖がらずに動物を近くで見ることができてうれしかった」「本当に動物がその場にいるみたいで、迫力があった」などと口々に感想を言い合った。

VR内の映像。犬と触れ合える疑似体験ができる
VR内の映像。犬と触れ合える疑似体験ができる

府とペットフードなどを手掛けるネスレ日本による動物愛護教育プログラム「ともにくらす ピュリナ わんにゃん教室 the VR」。VRでは、府動物愛護管理センターの監修で作成した映像を放映する。犬や猫の正しい触れ方や飼い方を学べるほか、犬や猫の目線から人間がどのように映るのかといったことも体験できる。府の担当者は「VRならではの臨場感のある映像から、子供たちが動物に興味を持ってもらえれば」と話す。

学校での動物飼育、大幅に減少

新たな試みの背景にあるのは、子供たちを取り巻く環境の変化だ。大手前大の中島由佳教授(発達心理学)が全国の小学校などを対象に実施した調査によると、動物飼育を実施している学校は平成15~24年に93・4%だったが、29~30年は85・8%に。鳥や哺乳類に限ると、15~24年の86・4%から29~30年の49・1%まで減っている。

動物は夏休みなどの長期休業中も世話が必要なことから、飼育の継続が難しいと感じる学校が増えたほか、子供たちのアレルギーや感染症への不安から飼育に二の足を踏む学校もある。また近年は、ペットの屋内飼育が浸透してきたため、家庭でペットを飼っていない子供たちにとっては外で動物と接する機会が大幅に減った状況がある。

一方で、動物と触れ合ったり飼育したりすることは子供たちが命の尊さや他人に対する思いやりなどを学ぶ機会になる。中島教授の調査では、学校での動物教育や家庭で動物を飼うことによって、子供たちの他人に対する共感性を高めているというデータもある。

府は、動物愛護管理センターで引き取った犬を「モデル犬」として府内の学校などに派遣し、子供たちに触れ合う機会を提供していたが、動物愛護団体からの批判を受けて令和2年に中止した。そうした中で、府と包括連携協定を締結しているネスレ日本が譲渡ペットの促進など動物愛護の活動に取り組んでいることから、今回のプログラムに協働で取り組むことにした。

今後、府内の小学校などで順次実施する予定で、中島教授はプログラムについて「子供たちにとって動物と触れ合いにくい環境にある中で、VRを通じてでも、動物たちがどのような動きをするのかといったことを知ることができるのは非常にいいことだ」と評価している。(江森梓)

会員限定記事会員サービス詳細