安倍氏銃撃事件 山上容疑者「鑑定留置」のナゼ

鑑定留置のため、奈良県警奈良西署から移送される山上徹也容疑者=7月25日(永田直也撮影)
鑑定留置のため、奈良県警奈良西署から移送される山上徹也容疑者=7月25日(永田直也撮影)

安倍晋三元首相(67)が奈良市での参院選の演説中に銃撃されて死亡した事件では、検察側の請求に基づいて裁判所は、逮捕された無職、山上徹也容疑者(41)を約4カ月間、鑑定留置することを認めた。

鑑定留置は、事件当時の刑事責任能力の有無などを調べるため、容疑者や被告を病院などに留置する刑事訴訟法上の手続き。

山上容疑者は、警察の調べに対し、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みや、幹部の殺害を計画していたと暴露する一方、安倍氏銃撃は「政治信条への恨みではない」と述べたとされる。動機と犯行の因果関係が十分とはいえず、捜査機関の内部でも犯行時の精神状態を問う向きがあったことから、検察側としては鑑定で刑事責任能力の存在を立証し、確実に有罪に持ち込む狙いがある。

鑑定留置には2つのパターンがあり、逮捕から起訴までの間に検察側が裁判所に請求、もしくは起訴後に裁判所が弁護側の請求や自らの職権で鑑定する。

鑑定留置が始まると、精神科医が数カ月に及ぶ鑑定を実施する。善悪を判断する能力などを失った「心神喪失」や、その能力が著しく減退した「心神耗弱」と判断されると、刑事責任を問えず不起訴や、起訴されても刑の減軽が見込まれる。

衆人環視下での銃撃のため、犯人性や殺意の有無が法廷で争われる可能性は極めて低く、最終的な争点は刑事責任能力の有無に絞られるとの見方が強い。

ただ起訴されれば殺人罪が適用され、裁判員裁判の対象となる。そうなると、国民から選ばれた裁判員が公判に参加し、プロの裁判官とともに有罪か無罪かを判断、有罪であれば量刑を決める。

社会的な注目度の高さも手伝って、検察内部で「一般の国民が理解、納得できる手続きを踏み、起訴、不起訴の判断を丁寧に説明しなければならない」とされたことが、鑑定の実施に結びついた。

鑑定留置の期間は11月29日まで。延長はあり得るものの、その結果が今後の捜査、公判に大きな影響を及ぼすことは間違いない。(山本考志)

会員限定記事会員サービス詳細