小林繁伝

勝てない赤ヘル…「受け身の野球」で不振 虎番疾風録其の四(87)

九回2死一塁で中日の代打大島(左)に同点2ランを浴び、うずくまる広島の金城=昭和51年4月15日、ナゴヤ球場
九回2死一塁で中日の代打大島(左)に同点2ランを浴び、うずくまる広島の金城=昭和51年4月15日、ナゴヤ球場

勝てない。まったく勝てない―。昭和51年、いきなり不振のどん底へ突き落とされたのが、前年の覇者・古葉広島である。開幕の阪神戦を4―4で引き分けると、続くヤクルト戦に連敗。巨人戦も3連敗。6試合を終えて5敗1分け。

戦力が落ちたわけではない。1番の大下から始まる〝V1オーダー〟はそのまま。選手たちは「オレたちはチャンピオンなんだ」と自覚し、キャンプでは例年に増しての激しい練習。山本は「オレが打たなきゃ」。エース外木場は「ワシが抑えにゃいけん」と意気込んだ。

ヤクルトの荒川監督によるとそれが不振の原因だという。

「カープも受け身の野球をするようになった。巨人のV9時代でも、受け身に回ったら勝てなくなったもんだ」


◇4月15日 ナゴヤ球場

広島 000 201 001=4

中日 110 000 002=4

(広)金城 (中)星野

(本)ローン①(金城)木俣②(金城)衣笠②③(星野)大島①(金城)


開幕7試合目、広島は2点リードで九回2死一塁までこぎつけた。初勝利まであと1人。だが、女神はまたソッポを向いた。代打大島の打球は無情にも左翼スタンドに飛び込んでいく。

「一発狙っているのは分かっていた。だから外角でタイミングを外すつもりが真ん中に入ってしまった」

痛恨の160球目。金城はマウンドでガックリ。

「精魂込めて投げたのを打たれたんですから仕方ないでしょう。〝まさか〟とは思いましたが…」と古葉監督も天を仰いだ。

巨人・長嶋監督は広島の誤算は「投手陣」にあるという。「どの投手も丁寧にと思うあまり、ストライクを置きにいっている。だからタマに威力がなくなっているんです」。そして阪神・吉田監督は「打線の自滅ですわ。打ったらいかんタマを打ってます」と分析した。

「1・3・2・2・1・3・0」。この7試合の広島の併殺数。一発で点差を詰めようとするあまり、ボールを振る強引な打撃で招いた〝併殺地獄〟だった。

この時点でホプキンスの打率は・174、水谷が・136。4番の山本は5試合ノーヒット。打率も1割を切り・080。こうして一勝もできないまま4月16日、古葉広島は本拠地での巨人戦を迎えたのである。(敬称略)

■小林繁伝88

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