誤嚥防いでおいしく食べるには… 具材の切り方工夫、煮汁にとろみを

ポテトサラダの具材は、練ったポテトになじむように切るとよい
ポテトサラダの具材は、練ったポテトになじむように切るとよい

食欲の減退が気になる夏。噛んだり飲み込んだりする力が衰えつつある高齢者の場合はなおさらで、食事作りにはひと工夫が求められる。ポイントになるのが、誤って食べ物が気管に入る「誤嚥(ごえん)」を招かないようにすることだ。おいしさと食べやすさはどうすれば両立できるのか。専門家に聞いた。

(津川綾子)

ずれるタイミング

食べるとき、口の中では「噛む」「飲み込む」が順次行われる。このうち誤嚥に関わるのは、「飲み込む」ほうの機能だ。

「ものが喉につかえたり、誤って気管に入ったりせずに食べられるかは、飲み込むときの力(パワー)と、タイミングの2つの機能にかかっている」と話すのは、摂食嚥下リハビリテーションの専門家でもある日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(東京)の菊谷武院長。

食べ物を飲み込む機能は「嚥下」とも呼ばれる。菊谷さんによると、数ある体の機能のうち、嚥下は比較的「長持ち」で、一般的には後期高齢者(75歳~)になる頃まではほぼ問題なく行えるという。

とはいえ、厚生労働省の国民健康・栄養調査で見ても、噛んだり、飲み込んだりする「食べる力」は加齢とともに衰える。頻繁にむせるようになってしまうと、食べることがおっくうになり、低栄養や体の力の衰えを招いてしまうリスクとなる。

飲み込み補う「噛む力」

誤嚥が起こる要因の一つは、加齢に伴い、飲み込む「タイミング」にずれが生じやすいことがある。

喉には、胃に通じる食道と、肺に通じる気管があり、それぞれの入り口は近接してある。食べものを飲み込む際は、気管のほうに蓋がされ、食べ物は食道を通るようになっている。

ところが食べ物の流れと蓋を閉じるタイミングがずれると、誤って食べ物が気管に入る。これを気管から押し出そうとせき込むのが「むせる」という反応だ。

加えてもう一つ、飲み込む力が衰えると、口に食べたものが残ってしまい、呼吸に伴い誤嚥してしまうこともあるという。

「そうした飲み込む力の衰えを補うのが、『咀嚼(そしゃく)』の力。よく噛むことができる力を維持することも大事だ」と菊谷さんは話す。

口の中で散らばらないように

「やわらかくしたり、細かくしたり。それさえすれば『食べやすい』というのは、思い込みでしかない」と話すのは、食品メーカー「キユーピー」のコーポレートシェフとして介護食の開発に携わる、原進さん(55)だ。

食材によっては、細かく刻むことにより食べにくくなることもあるという。例えば食卓でおなじみのポテトサラダ。具材のゆでたニンジン、キュウリは細かくみじん切りにした場合、つぶつぶと細かく口の中で散らばり、残ってしまう。すると、何かの拍子に気管に吸い込んでしまうリスクになり得る。

しかし、キュウリを輪切り、ニンジンをイチョウ切りにすると、やや大きめながらも具材が練ったポテトによくなじみ、かえって飲み込みやすくもなる。このように食材が同じでも切り方で食べやすさが変わる。

また高野豆腐の煮物など、「噛んだ瞬間に汁気があふれてくるものは、汁が気管に入り、むせてしまうことも。同様に、スイカなどの果物も汁気に注意が必要」(原さん)。雑炊やお茶漬けも注意が必要で、煮物のだしは水溶き片栗粉でとろみをつけると食べやすい。ほかに、ミニトマトなど丸く表面がつるりとしたものは切っておく-といった工夫も。

「夏休みの帰省時に実家の食卓を観察して、食べづらそうなものなどがあれば、提案してみてほしい」と原さんは話している。

会員限定記事会員サービス詳細