朝晴れエッセー

颯爽と・8月10日

この盛夏の中、自転車で颯爽(さっそう)と風を切って走る。爽快である。颯爽とは私個人の見解ではあるが。

自転車には子供の頃に乗ったきりで、足腰の運動と、津に移り住んで半年足らずなのでその探訪も兼ねて、80の手習いを始めた。簡単ではなかった。荒馬の調教と同じで、言うことをきいてくれない。

世間の常識的な思惑や家内の心配を尻目に、初めは2キロ圏内で練習。ふらつきが大きいのは中古自転車のせいと思い、ママチャリの新車を買った。ふらふらは同じだった。加齢のせいと分かり、今の年を思い、自分の非力に心が折れた。

人混みでは降車する。信号は守る。無理はしない。雨の日は乗らない。小生はこの4つのルールを自らに課している。

今は5キロ圏内に広げ、毎日新しい発見があり楽しい。津は県庁所在地であり、32万石・藤堂高虎の居城もあり、新旧の名跡は各所に点在している。

午後6時に出発。曇天の日は西へ。気が向けば南北の国道23号を、西日のきつい日は3キロ先の海へ。釣り人に釣果を聞き、野辺のお地蔵に手を合わせ、家内の喜ぶ顔を見たく、ケーキやまんじゅうにわらび餅と地元の特産を買って帰る。

走っていて気づいた。津の街はきれいな街だ。ゴミや犬の糞(ふん)が落ちていない。これは行政や街の人たちの質の高さを感じる。もっと津のことが知りたく、津の人情に触れたく、秋には10キロ圏内にまで広げようと思っている。

その秋には街の人たちに、1台の自転車が颯爽と映るだろう。

山田豊幸(79) 津市

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