大谷は「100年に1人の存在」 対左打者で成長、球速もアップ

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平(28)が9日、カリフォルニア州オークランドでのアスレチックス戦で、1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」を達成した。専門家は、左打者への初球のカーブを今季の成長ポイントに挙げ「大谷流のストーリーを作れるようになった」と指摘。別の専門家は「100年に1人の存在」と称賛した。

今季の大谷は投手での活躍が目立つ。昨季はあと1勝で2桁勝利を逃したが、今季は早くも10勝目に到達した。奪三振率も向上しており、野球のデータ分析に詳しいネクストベース主任研究員の神事努氏は、左打者への初球のカーブを成長のポイントに挙げる。米データサイト「ファングラフス」によると、左打者への被打率は昨季の2割3分5厘から、今季は2割2分7厘(米国時間9日現在)と改善した。

ネクストベースが米大リーグ機構(MLB)の公式データ解析システム「スタットキャスト」を基に算出した数値によると、前半戦、大谷が左打者にカーブを投げた割合は、今季は14%で昨季の4%を大きく上回った。特に、左打者の初球に投げたカーブは37%を占めた。カーブは、ボールの軌道が一度、上に外れるため、打者の見逃しが多くなる球種。打者は、4回に1度の割合で見逃した。神事氏は「打者がバットを振れば、安打になるリスクが生まれる。大事な初球で見逃しストライクを奪い、打者を楽に追い込むことができるようになった」と指摘する。

加えて「スタットキャスト」によると、直球の平均球速は、昨季の約154キロから約157キロに上がった。球速が上がることで、ファウルが奪いやすくなるという。神事氏は「左打者には見逃しのカーブ、右打者には直球でファウルを奪って、投手優位のカウントで進め、追い込んでからは、ボールゾーンへのスライダー、スプリットでバットを振らせる。大谷流のストーリーを作れるようになった」と分析した。

大谷の偉業達成を大リーグ評論家の福島良一氏は「昔とは違い、投打ともにレベルが上がり、特別な技量がないと通用しない時代。投打の両方で超一流の結果を出したのは、大きな価値がある」と強調する。時代が大きく異なるため、ベーブ・ルースと大谷の単純な比較は難しいが、福島氏は大谷の優れている点を「パワー」とみている。

ベーブ・ルースは、レッドソックス時代の1918年、投手で13勝、打者で11本塁打をマークした。福島氏によると、当時は「飛ばないボール」を使用しており、ア・リーグ全体でも本塁打は100本に満たなかった。11本塁打を今の時代に換算すると、350本塁打以上も打った計算となり、打者としてのベーブ・ルースは、ボールを飛ばす力に優れていたといえる。一方、投手としては速球派ではなく、三振を多く奪うタイプではなかったという。大谷の場合は「投手として100マイル以上の剛速球を投げて三振を奪い、打者としても驚異的なパワーで本塁打を量産する。スケールの違いを感じさせる」と指摘する。

大谷の出現は、米球界の常識も変えた。今年7月の米大リーグの新人選択会議(ドラフト会議)では1巡目で2人が「二刀流選手」として指名された。二刀流への挑戦を希望する米大リーガーも出ている。

とはいえ、誰でも「第二の大谷」になれるとは限らない。福島氏は「大谷のようにチームのエースとして活躍し、本塁打も量産する選手はなかなか出てこないだろう。ベーブ・ルースも大谷も、100年に1人の存在といってもいい」と力を込めた。(運動部 神田さやか)

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