小林繁伝

張本・王が援護弾、小林の「出世試合」に 虎番疾風録其の四(86)

巨人移籍後初ホームランを放つ張本。投手は広島の池谷公二郎=昭和51年4月11日、後楽園球場
巨人移籍後初ホームランを放つ張本。投手は広島の池谷公二郎=昭和51年4月11日、後楽園球場

小林繁に「先発」の命が下った。昭和51年4月11日、相手は前年の覇者・古葉広島。ここまでチームは3勝2敗1分け。小林は開幕から3試合、中継ぎで登板し、8日の大洋戦では2番手で今季初勝利を挙げていた。

51年シーズン、小林は18勝(8敗2S)を挙げ、主力投手の仲間入りを果たす。そのきっかけとなった〝出世試合〟がこの一戦である。


◇4月11日 後楽園球場

広島 001 000 000=1

巨人 221 000 32×=10

(勝)小林2勝 〔敗〕池谷2敗

(本)張本①(池谷)王②(小林)


三回に大下、久保の連打で1点を失ったものの、小林は完投目前。そして八回の攻撃。2死走者なしでスタンドの5万人の大観衆は打席の王に注目していた。

実は一回に広島の先発・池谷から張本が、右翼席へ移籍後初ホーマーを放っていた。ここで王が打てば初の〝HO砲そろい踏み〟。王が広島・小林の3球目を見送った。すると―。

「この次、同じボールがきたら王さんはホームランを打つぞ」

ベンチの張本が隣に座っていた高田に声をかけた。

「えっ、そんなことが分かるんですか?」

「右足の踏み出し、左ヒザの送り。タイミングはピッタリ。さっきの見送りは手をこまねいたのではなく、単にバットを出さなかっただけだ」

だから「打つ」というのである。

4球目ファウル。そして5球目に張本のいう「同じボール」がきた。快音を発し打球が右翼スタンドに飛び込む。ベンチを飛び出した張本は「ほらな」という顔でポーンと高田のお尻を叩いた。

張本 3打数3安打1打点1本塁打

王 5打数4安打5打点1本塁打

「ウチの看板は凄いですねぇ。ええ、文句なしです」と長嶋監督も笑いが止まらない。

初のHO砲そろい踏みは、完投で2勝目を挙げた小林への〝祝砲〟となった。そしてこの試合を皮切りに、小林は広島戦に投げまくり、12試合に登板(先発9、リリーフ3)し6勝2敗1S。今季最終戦の10月16日の26回戦(広島)では、先発加藤の後を受け六回から4イニングをピシャリ。〝胴上げ投手〟に輝く。まさに栄光への始まりである。(敬称略)

■小林繁伝87

会員限定記事会員サービス詳細