スポーツ茶論

高校野球改革「大谷頼みだけでは」 津田俊樹

全国高校野球選手権大会が開催されている甲子園球場=兵庫県西宮市(本社ヘリから、彦野公太朗撮影)
全国高校野球選手権大会が開催されている甲子園球場=兵庫県西宮市(本社ヘリから、彦野公太朗撮影)

突然、後輩記者から難問を投げかけられた。

「なぜ、高校野球の新入部員が増えたのでしょうか」

日本高校野球連盟は7月、今年5月末現在の部員数を発表した。硬式野球部員は13万1259人で昨年より3023人減少したものの1年生は4万5246人で昨年より382人増えたという。

合計部員数は8年連続ダウンながら、新入部員の増加は8年ぶり、退部せずに3年間部活動を続けた割合を示す継続率は1984年の集計開始以降で最も高い92・7%を示した。野球人気の陰りがいわれ続けるなか、1年生部員減少に歯止めがかかった理由は何か。

「大谷効果じゃないの」

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平の活躍に刺激され、増えたのでは。正直、苦し紛れの答えだったが、後輩はあっさり納得してくれた。

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現場の声を聞いて確かめようと、夏の甲子園を目指す埼玉大会が行われている、さいたま市営浦和球場に向かった。立教新座高校野球部の鈴木康友・非常勤副顧問に会うためだ。奈良・天理高校からドラフト5位で巨人に入団、西武、中日などで内野手、コーチとしてプロ球界に名を残し、学生野球資格回復の研修を経て、現在は長男の母校の部員にアドバイスをおくる。

浦和実業との4回戦は手に汗を握る投手戦となり、0対1で惜しくも敗れた。試合後、監督の総括が終わると鈴木副顧問は「俺からも一言」と切り出し、一人一人名前を挙げながらねぎらいの言葉をかけた。

肩を震わせながら悔し涙を流す3年生の主将は丸刈り、ベンチ入りメンバーに抜擢(ばってき)され、代打出場した1年生が髪を伸ばしている。

「実は、1年生が31人も入部して70人以上の大所帯になりました。運動部はサッカーをはじめ他にもあるし、文化部の将棋や囲碁など選択肢が広がっているのにね」

例年なら1年生は20人前後なのに、30人超えに驚きを隠さない。

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全国的にみても、上級生が練習の準備や後片付けを率先して行う傾向になってきた。

「われわれの時代と違って、先輩後輩、丸刈りなどの締めつけがなくなってきましたから。ま、それもあるけど1年生が増えたのは、やはり大谷でしょう。今の中学生、高校生に夢を与えています」

自らがミスタープロ野球、長嶋茂雄氏に憧れ、プロの道に進んだことを踏まえ、スーパースターの存在の大きさを強調する。

一方、継続率が伸びたのは情報分析で貢献したいという明確な目的意識を持って入部してくる生徒たちがいるからではないか。

グラウンドでプレーするのではなく、パソコンや動画を駆使してデータ収集にあたる。監督や選手たちも彼らを重要な戦力として評価し受け入れている。

高校球界を取り巻く環境が変わりつつあるとはいえ、勝利至上主義、暴力、いじめ、モンスターペアレントなどの負の部分が解消されたわけではない。

6日から全国大会が開幕した。メディアも「汗と涙の感動のドラマ」という従来の報道姿勢のままでは取り残されていく。生徒たちが時代の先をいき、周囲が追いかける。高校野球改革は大人の問題かもしれない。

「重要なのは今後も部員増が続くかどうかです。指導者も変わっていかないとね」

野球界の将来のためにも鈴木副顧問の言葉が胸に重く響いた。

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