「1億総投資家」へNISA恒久化など要望 証券業界

日本証券業協会の森田敏夫会長
日本証券業協会の森田敏夫会長

岸田文雄首相が打ち出した「資産所得倍増プラン」を商機に変えようと、証券業界が動き出した。日本証券業協会は少額投資非課税制度(NISA)の恒久化や投資教育の充実などを提言し、投資家の裾野拡大を狙う。ただ、物価は上がり賃金は停滞する中で家計のやりくりは厳しく、投資余力を生み出す政府の成長戦略が必要との指摘もある。

日証協の森田敏夫会長は「中間層の資産所得拡大がテーマだ。NISAの拡充や金融教育の充実などで実現につなげたい」と述べ、資産所得倍増プランへの熱い期待感をアピールする。

「1億総投資家」を目指す証券業界が期待するのは、時限措置であるNISAの恒久化だ。制度が平成26年に導入されてから、非課税期間は税制改正で一度延長され、現在は令和10年までが期限。いつまで優遇されるか分からないことが投資未経験者の参入を阻んでおり、恒久化は念願となる。

7月に発表した提言では、NISAを始めるタイミング次第で非課税枠に格差が出る恐れがあると訴えた。現在は64歳までが対象となる個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢引き上げと併せて、優遇制度の使い勝手向上を求める。

また、政府が脱炭素の資金調達のため創設する「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」を機関投資家だけでなく個人向けにも発行し、国民が債券投資で脱炭素を支援できる体制を作ることも提言。投資教育を専門的に実施する公的機関を創設し、貯蓄から投資への誘導を行うことも盛り込んだ。

日証協では、今回の提言を機に投資家の裾野拡大に向けた「ムード作り」(森田氏)を進めたい考え。今後は政府に要望を伝え、年末をめどに策定される資産所得倍増プランの具体策に盛り込んでもらう考えだ。

ただ、足元の物価高で家計は厳しく、投資に振り向ける余裕がないとの批判も強い。岡三証券の松本賢エコノミストは「企業に賃上げを促す政府の成長戦略が伴わなければ、投資のための所得が家計に分配されない」と指摘し、積極的な財政支出が必要だと訴える。(根本和哉)

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