長州正論詳報

「安倍氏は闘う政治家」台北支局長ら講演

産経新聞の矢板明夫・台北支局長らが講演した長州「正論」懇話会第42回講演会=8日、山口県下関市
産経新聞の矢板明夫・台北支局長らが講演した長州「正論」懇話会第42回講演会=8日、山口県下関市

山口県下関市の市生涯学習プラザで8日に開かれた長州「正論」懇話会の第42回講演会では、産経新聞の有元隆志・正論調査室長を進行役に田北真樹子・月刊正論編集長と矢板明夫・台北支局長が「安倍晋三の遺志を継げ」と題して講演した。田北氏は「本当に闘う政治家だった」と安倍氏を評し、矢板氏は「台湾にとって最大の味方を失った」と台湾人の心情を代弁した。主な内容は次の通り。

田北 安倍氏は昨年から「台湾有事は日本有事だ」と盛んに発言していた。安倍氏が亡くなってわずか1カ月もたたない中で、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことを受け、中国は演習名目で日本の排他的経済水域(EEZ)に5発の弾道ミサイルを撃ち込んだ。中国は明らかに日本を狙っている。台湾が狙われるということは日本が狙われるに等しいということが分かった。安倍氏は「日本人が自分たちの手で日本を守る」といっていた。早く成し遂げなければいけない。

矢板 多くの台湾人が安倍氏を本当に身内のように思っていた。安倍氏が亡くなった7月8日の夜からすぐに「安倍さんありがとう」「台湾の永遠の友」というメッセージがライトアップされた。こんなに国外で愛され、尊敬され、感謝される日本の政治家はいなかったのではないか。

田北 岸田文雄首相はかなり早い段階で安倍氏の国葬を決断したといわれているが、国葬に対しては異論もある。異論は一切受け付けないという毅然とした対応を取るべきだ。

有元 安倍氏の国葬には蔡英文総統にぜひ来てほしいと思う。

矢板 もちろんだ。台湾人を代表するのは蔡氏しかいない。ぜひ蔡氏に来てほしいし、蔡氏も行きたいだろうが、現実的に難しいだろう。

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矢板 安倍氏ほど世界に大きな影響力を持つ政治家はいない。早くから中国の台頭を予測し、第1次政権で「インド太平洋構想」を打ち出した。「台湾有事は日本有事」もそうだが、本当に安倍氏は国際情勢の偉大な予言者だ。

田北 安倍氏は日中関係について、2国間だけを見る視野狭窄的な外交ではなく、地球儀全体を俯瞰し、どう中国と対峙していくか考えていた。2016年のアフリカ開発会議(TICAD)では「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱し、日米豪印によるクアッドという枠組みもつくった。

有元 中国の習近平国家主席とは厳しい関係だった。

矢板 安倍氏が再び首相に就いた平成24年当時、民主党政権による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化で日中関係は最悪だった。中国は水面下で①尖閣を国有化前の状態に戻す②靖国神社に参拝しない③歴史問題でもう一度謝罪すること-という3つの条件を突きつけたが、安倍氏は完全に無視した。第2次安倍政権発足後、2年間は政治交流が全くなかった。しかし、2014年12月、中国で開かれた国際会議で安倍氏と習氏は会談した。習氏が不機嫌そうな仏頂面で安倍氏と握手する写真があるが、あれは中国外交が完全に負けた瞬間で、戦後、日本が対中外交で初めて勝利した。

田北 安倍氏は中国からいろいろ突き付けられたが、全く屈しなかった。日本が変わらなくても中国が折れてくる。これが事実だということを示したことはすごく大きかった。安倍氏は習氏に対し、尖閣に関して「日本の決意を見誤るな」と何度も言っている。今の岸田政権にはそのような迫力もないし、そこまで中国と闘おうという気概も示せていない。

矢板 習氏は、ペロシ氏の訪台でメンツをつぶされたが、今この瞬間は戦争をやる気は全くないと思う。台湾における大規模な軍事演習も国内向けのパフォーマンスだ。ただ、今回は演習地域を6カ所に分けて、初めて台湾包囲網をつくった。こうした演習が毎年続けば10年後はどうなるか分からない。今は安心だが、今後は非常に危険だということを国際社会は認識しなければいけない。

田北 安倍氏はアメリカに対し、台湾に関する曖昧戦略をやめるべきだといっていた。

矢板 台湾政策には2つの曖昧戦略がある。1つは中国が台湾を攻めたときアメリカは介入するのか、2つ目はアメリカが介入したときに日本が協力するのか。いずれも曖昧だった。安倍氏が「台湾有事は日本有事」といったのは、2つめの曖昧戦略をやめて、日本は介入すると宣言したに等しい。その後、アメリカに対して曖昧戦略をやめた方がいいと提案している。台湾が最もいいたくてもいいにくいことを安倍氏がいってくれた。台湾にとっての最大の味方がいなくなってしまった。

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有元 安倍氏の歩みを振り返ると、闘う政治家という印象が強い。

田北 安倍氏は敗戦後、日本が強いられてきたものに立ち向かった。先の参院選でも、今後を左右する重要な選挙なので自民党が勝たなければいけないと、全国を奔走した。同時に憲法改正に関する集会も全国くまなく回っていた。鬼気迫るものがあった。本当に闘う政治家だった。

有元 安倍氏の悲願だった憲法改正、北朝鮮による拉致問題の解決、これは是が非でも残された政治家が後を継いでいかなければいけない。

【長州正論】 「自分の国、自分で守れ」本紙・矢板明夫記者ら


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