百貨店、独自のネット通販戦略を強化 来店客回復で

新型コロナウイルス禍で関西の百貨店が注力してきたインターネット通販(EC)の戦略が変化してきた。来店しなくても商品が買えることから支持を伸ばしてきたが、最近の来店者数の回復傾向に反比例するように需要が低下。ネットだけの限定品を用意したり、店頭で商品を下見してもらった上でネットでの購入を呼びかけたりと、各百貨店がECの付加価値を高めたり独自色を強めたりする戦略を急いでいる。

「店頭と同じ商品を並べた今までのオンラインショッピングサイトではなく、お客さんが常にチェックしたくなるよう魅力を高めないといけない」

大丸梅田店(大阪市北区)の担当者はこう語り、ライバル店との競争を勝ち抜くためにもサイトの差別化が必要だとの認識を示す。

新たなEC戦略として大丸梅田店が設置しているインターネットサイト「美味テッド」
新たなEC戦略として大丸梅田店が設置しているインターネットサイト「美味テッド」

同店は昨年3月、従来のECサイトとは別に、店頭に並べるほどの数量は用意できない希少なスイーツなどがネット限定で買えるサイト「美味(びみ)テッド」を試験的に開設。口コミで短期間で話題を呼んだことから同9月に担当バイヤーを置いて商品構成を強化し、現在まで人気を高めている。

ECサイトに独自色を出す動きは他店でもみられる。近鉄百貨店は店舗を展開する4地域ごとに名産品を特集した「大和路ショップ」「紀州路ショップ」など4サイトを運営。コロナ禍で疲弊する郊外店の売り上げを確保する狙いもあったが、客の居住地に関係なく遠方の名産品が買えることから好評だ。

昨年9月からは、賞味期限が近いなどの理由で処分される商品を集め、売り上げの一部が福祉などの寄付になる「キキマーケット」も設置した。環境や社会に配慮した商品を優先的に購入する「エシカル消費」の動きも追い風となって支持を拡大。企業イメージを高める効果もありそうだ。

各百貨店がECサイトを高付加価値化したり、他店との差別化を図ったりしているのは、EC需要が曲がり角を迎えていることがある。

関西の主要百貨店が8月1日発表した7月の売上高(速報値)は、大半の店舗が前年実績を上回った。同月の各店の来店者数はコロナ再拡大もあって失速がみられたが、前年同月比で増加傾向となっている。

一方でECの成長は鈍化がみられ、関西のある百貨店グループの4~6月期のEC売上高は、コロナ禍の反動もあり前年同期比約90%だった。大阪市内の百貨店関係者は同店関係者は「ECで購入していたお客さんが店頭に戻っている。ECは有効な販売手法であり強化していく必要がある」と語る。

こうした中、客にネットとリアル店舗の垣根を越えてもらおうという動きもみられる。高島屋大阪店(同市中央区)では、ネットをきっかけに同店で販売するランドセルに興味を持って来店した客に、店舗で試して購入を決めてもらった上で、ECでの決済を勧めることもあった。

同店の担当者は「ランドセルのようにかさばる商品なら、ネットで購入してもらうほうがお客さんにとっても効率的だ。コロナ対策で店頭で接客する人員を最小限にしているので、生産性を向上させる工夫でもある」と説明。「ネットと店舗で相互にお客さんを送り合える仕組みを目指したい」と語った。(井上浩平)

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