黒海輸出再開で食料価格下落 不確実性は残る

ロシアのウクライナ侵攻後、滞留していたウクライナ産穀物の輸出が黒海の港から再開し、食料価格の下落傾向が強まっている。国連食糧農業機関(FAO)は、両国の輸出再開合意が価格下落に寄与したとしつつ、世界的な食料不足の緩和に「不確実性」が残るとの見方を示している。

FAOは5日、7月の食料価格指数が前月比8・6%下落し、140・9ポイント(2014~16年=100)だったと発表した。植物油と穀物の指数が2桁ポイント下落し、黒海からのウクライナ産の穀物輸出再開やインドネシアのパーム油の輸出が見込めることが価格を押し下げた。ただ、全体の食料価格指数は昨年同月比で13・1%高い。

ウクライナでは1日以降、オデッサ港に続き、チョルノモルスク港からも順次、貨物船が出航。6日には侵攻開始後初めて外国船が入港し、穀物の積載を始めた。ウクライナ側は月100隻以上の出港を計画している。黒海の港に出入りする貨物船は、国連とトルコ、ロシア、ウクライナ4者の合意に基づき、トルコのイスタンブールで武器の積載がないか査察を受けている。

ただ、ロシアは南部への攻撃を強めており、輸出が続くかは予断を許さない。英紙フィナンシャル・タイムズ電子版によれば、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は5日、「合意はしばらく維持されそうだが、ロシアは再び(黒海を)封鎖する方法を探るだろう」と述べた。

食料価格の下落が続くとはいえ、世界的な食料不足緩和につながるかには、慎重な見方も強い。FAOのチーフエコノミストは、肥料価格高騰が今後の農産物生産に打撃となるほか、世界経済の先行きや為替動向も食料危機をもたらす恐れがあるとして、「不確実性は多く残っている」と分析している。米CNN(電子版)は5日、「新型コロナウイルス、気候変動、各国の輸出規制などが相互に影響して食料価格は再びピークに達し、食料不足はすぐには改善しない」との英王立国際問題研究所の研究者の見方を伝えた。(石川有紀)

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