安倍氏銃撃1カ月

強い襲撃意志、高い計画性 鑑定留置中も捜査着々

山上徹也容疑者
山上徹也容疑者

安倍晋三元首相(67)に対する銃撃事件から8日で1カ月。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)は、刑事責任能力の有無を調べるため奈良地検が鑑定留置中で、取り調べは中断している。宗教団体への恨みから安倍氏の襲撃に向かったという動機は不可解だが、襲撃への強い意志、高い計画性から、捜査幹部の多くは「責任能力に問題はない」との見方を示す。奈良県警は公判を見据え、供述の裏付けや証拠の精査などを進める。

《安倍は本来の敵ではないのです》《現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません》

山上容疑者が事件前日、安倍氏が演説した岡山市の会場近くから、島根県のフリージャーナリスト宛てに送った手紙。母親が入信した旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への強い憎しみをつづる一方、安倍氏に対する直接的な恨みは見受けられない。

にもかかわらず、手紙の最後では《安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早(もはや)それを考える余裕は私にはありません》と、安倍氏の襲撃を示唆していた。結局、岡山では襲撃を断念し、翌日に奈良で決行したが、ある捜査幹部は「逮捕後の供述を要約したものが手紙の内容といえる。岡山の段階で襲撃を強く決意し、後戻りしないつもりで自分の思いを手紙にしたのだろう」と指摘する。

捜査を通じ、高い計画性も明らかになってきた。山上容疑者は昨年春以降、奈良市内の集合住宅やガレージを契約していたことが判明し、「火薬を乾かすために借りた」と供述。1年以上にわたって製造拠点を構えて武器の製作を進めていたことになる。当初は家庭連合の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の襲撃を画策しており、捜査関係者は「武器を使った襲撃自体は、かなり以前から計画していたようだ」と話す。

一方で、動機と説明する旧統一教会への恨みと、安倍氏殺害という結果とが飛躍し過ぎているという見方もあり、公判では刑事責任能力の有無が争点になることが予想される。奈良地検は7月25日から責任能力を調べる鑑定留置を開始。期間は11月29日までの約4カ月で精神科医らが鑑定する。地検は鑑定結果を受けて起訴するかどうか判断するが、捜査幹部の一人は「犯行を認め、計画性や動機についてもよどみなくしゃべっている。問題はないはずだ」と自信を見せる。

鑑定留置中は勾留が停止され、山上容疑者の取り調べはできない。捜査当局は凍結された山上容疑者の2つのツイッターアカウントの解析などに着手。親族からも事情を聴き、山上容疑者や母親と旧統一教会との関係についての調べも本格化させる方針だ。

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