山梨の中学生が断スマホ合宿 リアル体験でネットのめり込み防ぐ

「断スマホ合宿」で、自分で伸ばしたピザ生地に具材を盛り付ける参加者=1日、山梨県身延町(平尾孝撮影)
「断スマホ合宿」で、自分で伸ばしたピザ生地に具材を盛り付ける参加者=1日、山梨県身延町(平尾孝撮影)

現在の中高生にとって、生まれたときから当たり前に存在し、常に身の回りにあるのがスマートフォンだ。便利で生活に欠かせないアイテムだが、1日に数時間使ったり、ゲームで多額の課金をするなどの依存症が問題視されている。そこで、スマホやタブレットなどを持ち込まない「断スマホ」「デジタルデトックス」の合宿を、山梨県内の中学生15人が自然に囲まれた環境で取り組んだ。リアルな経験を積むことで、ネット社会へ過度にのめり込むのを防ぐ狙いだ。

「成績落ちたので」

「スマホを1日3時間やっていて、1学期の成績が落ちたので、スマホ時間を減らそうとしている」

断スマホ合宿に参加した中学1年の男子生徒は、自主的にこの合宿に参加したと話す。「キャンプも好きだし、カレー作りやまきでの火おこしも楽しい」が、やはり休憩時間には「スマホが気になる」との本音も聞こえる。

合宿は同県身延町のアウトドア施設「みのぶ自然の里」で、7月31日午後から3泊4日の日程で開催された。会場まで家族らに自動車で送ってもらったが、1人だけスマホを持ってきた子供がいた。持ち込めないことを伝えられると、家族に預け、全員がスマホ無しで参加した。

「断スマホ合宿」では、依存症のメカニズムなどの講座も開かれた=1日、山梨県身延町(平尾孝撮影)
「断スマホ合宿」では、依存症のメカニズムなどの講座も開かれた=1日、山梨県身延町(平尾孝撮影)

刺激求め依存に

合宿は、午前に座学、午後から夜にアウトドア体験を行った。座学では、精神科の医師らによる依存症についての解説や、甲府市に本部を置きギャンブルなど依存症からの回復プログラムを手掛ける団体「グレイス・ロード」のスタッフが自らの依存症克服の体験談を語った。

県立精神保健福祉センターの志田博和所長による講義では依存メカニズムの解説に聞き入った。「ゲームでクリアするなどの体験は快感になり記憶される。そしてストレスを感じると刺激が欲しいと感じ、ゲームでの快楽が思い出されゲームを始める。同じ刺激では満足しなくなり、課金などで新たな刺激を求める。これが繰り返され、やめられなくなる」

午後は丸太を切ったり、なたを使ってまき作り、火おこしからカレー作りやピザ窯体験、竹馬や竹トンボ作りなど。一般的なキャンプでも一度には体験できないような体を使う内容で、現実社会での充実感を味わった。

生地を自分で伸ばし、ソースや好きなものをそこにトッピングし、窯で焼いたピザ。「きれいにできあがって、おいしかった」「もっと難しいと思っていたが、意外と簡単にできてうれしい」と、参加者らも新体験を実感していた。

山梨県内で推計3万人

厚生労働省研究班の平成29年調査では、ネット依存が疑われる中高生は全国で93万人に及び、7人に1人の割合。すでに国内外で社会問題化していた状況に、新型コロナウイルスの感染拡大でネットやスマホの利用時間がさらに増え、依存リスクも高まっている。

志田所長は「この世代ではスマホなどに触れないで数日過ごすというのは、事実上生まれて初めてのこと。世界がスマホやネット中心で完結するのではなく、今回の体験を通じて、リアルとネット環境をバランスさせることを意識してもらいたい」と、合宿の狙いを説明する。

この合宿は令和3年の県政モニターアンケートで、世代を問わず、県内に3万人近くのネット依存者がいる可能性があるとの結果を受け、山梨県が初めて主催した。今回の合宿メンバーは、11月にも1泊2日の合宿を行う。スマホ使用時間の変化や、スマホとの付き合い方やリアルな対外コミュニケーションなどで意識に変化が起きたのかを確認し、スマホ依存脱却の方策を探る考えだ。(平尾孝)

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