主張

海底トンネル了解 「処理水」解決の第一歩に

東京電力福島第1原子力発電所=2020年12月8日、福島県大熊町(本社ヘリから、納冨康撮影)
東京電力福島第1原子力発電所=2020年12月8日、福島県大熊町(本社ヘリから、納冨康撮影)

東京電力福島第1原子力発電所の汚染水を浄化した「処理水」を海洋放出するため、海底トンネル工事などについての了解を福島県知事と地元の大熊町、双葉町の両町長が東電に伝えた。

海洋放出については昨年4月に政府が方針を決定しており、安全性の確認にあたっていた原子力規制委員会も先月に工事計画を認可している。

海底トンネルは、原発構内から沖合1キロの放出口までの海底岩盤を掘削して建設される。

政府の放出方針に沿って来春のトンネル完成を目指す東電は、今回の地元了解を受けて掘削工事を始めた。構内に林立する大型タンク群には総量で130万トンを超える処理水がたまっており、保管能力の上限が近づいている。

放出にあたっては、処理水に含まれる放射性元素のトリチウムが、国の排出基準の40分の1未満になるよう海水で薄めてから海底トンネルに流される。

これは世界保健機関(WHO)の飲料水基準に照らしても約7分の1の水準だ。海に出た後は無限希釈となるので、生態系への影響は起こり得ない濃度といえる。

だが、漁業者の反対は続いている。今年6月には全国漁業協同組合連合会が「断固反対」の特別決議を採択している。

政府と東電も「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と説明してきており、この海底トンネルの完成が放出に直結するかは不透明である。

反対は風評被害を懸念してのことだろうが、国内におけるそうした声が、海洋放出に反対を続ける中国などの論拠を補強することにならないか心配だ。

国際原子力機関(IAEA)の来日チームは、東電の計画や浄化施設を調査したうえで、安全上の問題がないことを今年4月に公表している。6月末には英国が日本産食品に設けていた輸入規制を撤廃した。台湾はそれに先立つ2月に規制を緩和している。

規制委の更田豊志委員長も福島第1原発の廃炉作業を進めるうえで、「処理水の海洋放出は避けて通れない道だと考えている」と述べている。

放出反対への固執からメリットは生じない。ここは漁業者側の歩み寄りが待たれるところだ。岸田文雄首相の一層丁寧な説明が必要であることは言うまでもない。

会員限定記事会員サービス詳細