主張

ASEANと中国 台湾有事は地域の脅威だ

経済版2プラス2の初会合に臨んだ(左から)萩生田光一経産相、林芳正外相、ブリンケン米国務長官、レモンド米商務長官 =7月29日、ワシントン(AP)
経済版2プラス2の初会合に臨んだ(左から)萩生田光一経産相、林芳正外相、ブリンケン米国務長官、レモンド米商務長官 =7月29日、ワシントン(AP)

カンボジアで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の外相会合は、中国の大規模軍事演習の実施で緊張が高まった台湾情勢への言及が相次いだ。

日本や米国、中国、ロシアなどが加わった18カ国による5日の東アジアサミット(EAS)外相会議で、ブリンケン米国務長官は「演習は極めて挑発的だ」と中国を批判した。中国の王毅外相は「米国が危機をつくり、緊張を激化させた」として、ペロシ下院議長の訪台を非難した。

中国の立場に理解を示す国もあった。だが、一連の会合を通じ、はっきりしたのは、中国の威圧的な軍事演習を誰も支持していないということだ。

中国軍の弾道ミサイルは中心都市台北の上空を通過し、日本の排他的経済水域(EEZ)にも着弾した。日本や在日米軍への攻撃も視野に入れた危険極まりない暴挙というほかない。

林芳正外相が会議で「日本の安全保障、国民の安全にかかわる重大問題」と提起し、演習の即刻停止を求めたのは当然だ。

3日のASEAN外相会議が急遽(きゅうきょ)、台湾情勢を議題に取り上げ、懸念を表明し、自制を求める声明を発表したのも、台湾有事への強い危機感の表れである。

中国の暴挙は台湾周辺にとどまらない。ASEANにとって南シナ海で主権を主張する中国の行動は深刻な地域問題だ。外相会議でも懸念が示されてきた。

南シナ海であれ、台湾周辺であれ、国際ルールを無視したわが物顔の振る舞いは看過できない。

ASEANは隣接地域である台湾情勢に対し、一段の関心を払ってほしい。台湾周辺での軍事演習を脅威とするのは、日本との共通認識である。南シナ海情勢と双方で連携を進めたい。

一連の会合に合わせ、4日に予定された日中外相会談は、中国側の直前の申し入れで中止された。EASでは林外相が発言する際、王外相とロシアのラブロフ外相が退席した。

ASEAN会合は、ASEAN地域フォーラム(ARF)に北朝鮮が参加しているように、体制が違う域外国に対話と信頼醸成の機会を提供する場である。

そうした中での中露外相の非礼は、わが国への挑発にほかならない。政府は毅然(きぜん)として対応しなければならない。

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