生き物好〝紀〟心

植物悲喜こもごも④カヤ 素朴で優しい味わいが魅力

カヤの実と枝。種からとれる油は古くから珍重されてきた=和歌山県立自然博物館提供
カヤの実と枝。種からとれる油は古くから珍重されてきた=和歌山県立自然博物館提供

和歌山県立自然博物館では開館以来、県内を中心として紀伊半島の自然に関する調査を行っており、植物分野は主に野生植物に関する資料を収集しています。この連載では、これまで野外で観察した植物について、エピソードを交えながら紹介します。4回目はカヤです。

素朴な味わいが魅力の種。スケールバーは1センチを示す=和歌山県立自然博物館提供
素朴な味わいが魅力の種。スケールバーは1センチを示す=和歌山県立自然博物館提供

カヤはイチイ科の常緑針葉樹で、種からとれる食用油が有用なことから全国各地に大木が残っています。和歌山県内では、紀美野町で天然記念物に指定されたものが知られています。

種の表面に左巻きの筋があるものは「ヒダリマキガヤ」と呼ばれ、油が多くとれるため特に珍重されます。種だけでなく木材も有用で、碁盤や将棋盤に加工されることから囲碁や将棋に詳しい方であればご存じの方も多いでしょう。筆者も小学校低学年まで将棋を習い、駒を指すときに出る音は「カヤで作った盤が一番いい」と聞かされたものです。

そんなカヤはイチョウやソテツなどと同じ裸子植物の仲間で、雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)があります。緑色で植物学的には「仮種皮」と呼ばれる肉質の皮の内部には、アーモンドのような形をした褐色の種があり、食べられます。かつて、紀美野町在住の方からカヤの種をいただいたので、食べた感想を紹介します。

一般的には、採集した後に灰を使ってアク抜きをします。ただ、いただいた当時、灰を手に入れることができませんでした。種が入った袋には「フライパンで炒(い)って鬼皮をむいてください」とのメッセージが。その後、しばらく置いているうちに乾燥したため、「そのまま食べられるかもしれない」と思い、殻を割って中身を食べてみました。

いただいてから数年がたってはいましたが、皮がついたまま食べると苦みが強いので、ザルの表面にこすりつけたり大根おろしで削ったりして取り除きました。トースターに並べて軽く焼いたところ、ほんのりと香ばしい匂いが。市販されているピーナツやアーモンドよりも素朴で優しい味わいでした。

地元では、クッキーにトッピングしたり、すり潰して粉状にしたものをあえ物にしたりとさまざまな楽しみ方があるようです。

実際のところ、野生に生えているカヤの種は野鳥や動物が食べてしまうので入手が困難です。しかし、市販されている場合もありますので興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。最後に、カヤの種をいただいた紀美野町の方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

(和歌山県立自然博物館 主任学芸員 内藤麻子)

会員限定記事会員サービス詳細