出動隊員4分の1がPTSDか 元首相の救命「精神的負担」 奈良市消防局

奈良市が開示した安倍氏銃撃事件での救急活動の報告書=8月5日、奈良市
奈良市が開示した安倍氏銃撃事件での救急活動の報告書=8月5日、奈良市

安倍晋三元首相(67)が銃撃され死亡した事件で、奈良市消防局は、現場に出動した救急隊員や消防隊員ら24人のうち、4分の1に当たる6人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられる症状を訴え、産業医の面談を受けたと明らかにした。銃撃された元首相の救命という特殊な任務を担った隊員らについて、市消防局は「精神的なショックが大きかったのだろう」と指摘。今後必要に応じてカウンセリングを行う。

PTSDは生死に関わるような出来事を体験して強い衝撃を受けた後、その記憶を思い出したり、不安や不眠、動悸(どうき)などが出たりする症状。事件当時、隊員らは現場で安倍氏の救命活動のほか、スムーズに救急車に収容するため周囲の交通整理などにあたった。

市消防局は個人情報として、6人の所属や当時の任務について明らかにしていない。症状については「比較的安定しており、現時点では通常通り業務に従事している」としている。

ただ、産業医面談を実施するような事案は年間1件程度にとどまるといい、同一の出動事案で6人が面談を受けるのは極めて異例という。担当者は「多くの聴衆がいる中で、銃撃された元首相への救命活動という特殊性もあり、普段から救急対応を数多くこなす隊員でも心理的な負担が大きかったのでは」と推測する。

今後はカウンセリングや経過観察などを続けるとし、担当者は「しばらくしてから症状が出る隊員もいるかもしれない。隊員の様子を注視し、必要に応じてケアしていきたい」と話している。

「衆人環視下、収容を優先」

奈良市が産経新聞の情報公開請求に開示した事件当時の救急隊員の活動報告書には、心肺停止状態の安倍氏に対し、現場に居合わせた看護師や駆けつけた隊員らが懸命の救命活動を行った様子が記載されていた。

最初に救急車の出動要請があったのは、安倍氏が銃弾を受けて倒れ込んだ直後の午前11時32分。救急車2台を含む車両計7台が出動し、最初の隊が同37分、次の隊も同41分に到着した。

報告書によると、安倍氏は「道路に背臥位(はいがい)〈あおむけ〉」の状態で、警備関係者や近くの医療機関の看護師らが付き添っていた。すでに「CPA(心肺停止)状態」で、医療関係者らが自動体外式除細動器(AED)で救命措置を試みていたが、心電図の初期波形は心臓の動きが全くない「心静止」を示していた。

隊員は「演説中に後方より銃撃された」と警備関係者から聴取し、首に銃撃で受けた傷を確認。当時、現場には安倍氏の演説を聴いていた多数の市民らが残っており、混乱状態だった。このため、報告書には「群衆多数であり、現場騒然としており衆人環視下であるため収容を優先とする」「プライバシー保護実施する」との記載もあった。

この部分について、市消防局は「安倍氏のプライバシーを守るためにも、すみやかに人目につかない場所に移動させることが必要だった」と指摘する。

救急車の到着から2分後の11時43分には安倍氏を車内に収容。酸素吸入や心肺蘇生、気管挿管、気道確保など応急処置を実施した。同45分にはドクターヘリとの合流地点へ出発した。

(秋山紀浩)

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