祇園祭・鷹山とウクライナ支援のかじ取り役 井上八三郎さん

鷹山の辻回しで指示を出す井上さん=京都市中京区
鷹山の辻回しで指示を出す井上さん=京都市中京区

3年ぶりに行われた祇園祭・後祭(あとまつり)の山鉾巡行に196年ぶりに復帰した「鷹山」。約10年前から、大勢の力を結集させて迎えた「夢舞台」となったが、「車方(くるまかた)」の棟梁(とうりょう)、井上八三郎さん(58)も支えたうちの1人だ。巡行の要となる山のかじ取りをしつつ、京都市国際交流協会(左京区)事務局長の顔も持つ。「どちらも本職のつもり」。ウクライナからの避難者を支援する業務でも、重要なかじ取り役を担っている。

「経験できないような緊張があったがやり切った」。24日午後、巡行を終えた鷹山とともに町内に戻り、日焼けした顔に満面の笑みを浮かべた。

4年前に友人の紹介で大船鉾で車方の手伝いをした際に、鷹山が車方を募集していると知り、参加。車方は大工や工務店など町外に委託するケースが多いが、自身も含めて鷹山のメンバー16人は居酒屋店主や会計士など畑違いの素人ばかりだった。

大船鉾や船鉾などの巡行に帯同して、かぶらと呼ばれる棒を車輪に差し込んで行う方向修正や、車輪の下に竹を敷いて方向転換させる「辻回し」などを学んだ。

新型コロナウイルスの感染拡大で巡行は2年連続中止となり、実地研修の機会は失われたものの、昨秋からは北観音山の協力を得て月1度の練習会を実施。そのたびに入念な話し合いを繰り返し、本番を迎えた。

3年前に就任した棟梁として臨んだ初めての巡行。当初は「本当に動くのか」などと揶揄(やゆ)もされた。それでも、「みんなそれぞれの技術はバラバラでも補いあえた。今のレベルでは95点をあげたい」と振り返り、協力してくれた山鉾関係者らにも感謝する。

一方、本業では、ロシアの軍事侵攻後に市などと立ち上げた支援組織「ウクライナ・キーウ京都受入ネット」で避難者支援に奔走。多くの市民や企業などからの支援も寄せられている。

29日時点で市内に滞在するウクライナからの避難者は、3家族計9人を含む44人。単身者が多く、個別の事情に配慮しながらどこまで踏み込んで支援できるか手探り状態が続く。

3日には避難者同士の交流会を初めて開催。参加者らは困りごとや京都生活での抱負を語り合ったという。「祭りも避難者支援も多くの人とのつながりを大事にすることで次へ進める」。今夏、改めて実感した。(田中幸美)

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