「9・11」遺族らトランプ氏に怒り サウジ主導の新ゴルフツアー後押しで

【ワシントン=大内清】トランプ前米大統領が、サウジアラビア政府系ファンドが支援する超高額賞金ゴルフツアー「LIV招待」を全面的に後押しし、2001年の米中枢同時テロで亡くなった被害者の遺族らから非難を浴びている。在任中にサウジと密接な関係を構築したトランプ氏は、退任後のビジネスでも「サウジマネー」を放すまいと躍起だ。

LIVは今年から始まったサウジ主導の新たなゴルフツアーで、賞金総額の高さが売り。男子ゴルフ最高峰の米PGAツアーは、LIVに参戦した選手には出場停止処分を下すなど対抗策を打ち出している。

トランプ氏は7月29~31日に開催されたLIV第3戦を米東部ニュージャージー州にある自身のゴルフクラブに招致するなどLIVとのビジネスを強化。PGAを批判し、「カネを稼ぎたければLIVに移れ」と選手たちをあおってきた。

ただ、現在のところ米国でLIVは必ずしも歓迎されていないのが実情だ。背景には、同時テロを起こした国際テロ組織アルカーイダの当時の指導者ビンラーディン容疑者(11年に殺害)や実行犯の大半がサウジ人だったことからくるサウジへの根強い不信感がある。

こうした中、7月28日に同クラブで行われたLIVのプロ・アマ戦に出場したトランプ氏は、スポーツ専門チャンネルESPNに「誰も9・11(中枢同時テロ)の真相にはたどりつけていない」と発言。これに猛反発した同時テロの遺族団体は29日、「トランプ氏はビジネスのために事実から目をそらしている」として同クラブ周辺で抗議集会を開いた。

トランプ氏は大統領在任中、最初の訪問先にサウジを選んで巨額の兵器売却で合意するなどサウジとは蜜月関係にあり、18年にトルコで起きたサウジ人記者殺害事件ではサウジへの責任追及を避けた。同氏の娘婿で大統領上級顧問を務めたクシュナー氏は、サウジの実質的指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子と親密な関係にあるとされる。

会員限定記事会員サービス詳細