列車無差別襲撃に備え訓練 小田急線刺傷から1年、実効性ある対策を構築

新宿駅に到着後、車内で暴れた犯人役から刃物を取り上げる警察官ら=5日午前10時34分、新宿駅(王美慧撮影)
新宿駅に到着後、車内で暴れた犯人役から刃物を取り上げる警察官ら=5日午前10時34分、新宿駅(王美慧撮影)

東京都世田谷区を走行中の小田急線の電車内で、乗客が男に刃物で刺されるなどして負傷した事件から6日で1年となるのを前に、警視庁新宿署や小田急電鉄は5日、車内での無差別襲撃事件を想定した訓練を実施した。不特定多数の人が利用し、逃げ場が少ない電車内での襲撃にどう備えるか。鉄道各社や国土交通省は実効性のある対策の構築や訓練を重ねている。

「何見てんだよ」「調子乗ってんじゃねぇぞ!」

訓練は代々木上原―新宿間を走行する車内で、刃物を持った男が乗客を襲って火を付けたとの想定で行われた。

緊迫した状況の中、電車はすぐには停車せず、車内アナウンスで細かい避難方法の説明が繰り返された。新宿駅に到着すると、駆け付けた新宿署員8人が一斉に突入。小盾と刺股で男を取り押さえた。

訓練には、新宿署員や小田急電鉄の社員ら計約80人が参加。事件が起きた車両と同じ型で行った。訓練終了後、新宿署の向出和雄地域課長は「走行中や混雑した車内で発生する事件の対処は難しいが、臨機応変に対応したい。ためらわずに110番通報してほしい」と話した。

事件は昨年8月6日夜、小田急線快速急行電車内で発生。対馬悠介被告(37)=殺人未遂などの罪で起訴=が車内で刃物を振り回し、10人が重軽傷を負った。その後、10月にも京王線の特急電車内で男が無差別に刃物で乗客を襲撃する事件が発生。男は床にライターオイルをまいて着火し、乗客十数人が重軽傷を負った。

身動きが取りづらい電車内で人を無差別に襲う事件が相次いだことを受け、国交省は今年6月、東京、大阪、名古屋などの鉄道や新幹線で、新しく製造する車両には車内防犯カメラの設置を義務化する方針を表明。鉄道各社もカメラの取り付けを進めている。

鉄道会社も対策を進める。小田急電鉄は非常通報装置のボタンが2カ所以上押された際は、車内の状況が確認できていなくても、周囲の列車も緊急停止させ、安全確保をした上で避難誘導する運用に改めた。

京王電鉄では、停止位置がずれていても緊急用装置を作動させることでホームドアを開けられるようにしている。JRは新幹線の車内で防犯訓練を実施した。

小田急線新宿駅の林智和駅長は「車内の防犯カメラの増設や、非常通報ボタンの認知向上を進めている。警察との訓練で連携を強化し、安心安全にご利用いただけるよう努める」と話した。(王美慧、橘川玲奈)

会員限定記事会員サービス詳細