安倍氏銃撃現場、制服警察官配置ゼロ 警察庁、警護計画の妥当性検証

街頭演説中に自民党の安倍元首相が銃撃された近鉄大和西大寺駅前の現場付近=7月8日午後0時8分、奈良市(共同通信社ヘリから)
街頭演説中に自民党の安倍元首相が銃撃された近鉄大和西大寺駅前の現場付近=7月8日午後0時8分、奈良市(共同通信社ヘリから)

安倍晋三元首相(67)が奈良市での参院選の演説中に銃撃されて死亡した事件で、現場の警護警備に制服警察官が1人も投入されていなかったことが5日、分かった。現場には私服警察官十数人しか配置されておらず、制服警察官の姿が犯罪の一定の抑止効果につながるとされる「見せる警戒」が機能していなかったとみられる。警察庁は奈良県警が作成した警護計画自体の妥当性についても検証を進めている。

事件では、安倍氏は周囲を360度見渡せるガードレールに四方を囲まれた狭いエリアで演説中に、山上徹也容疑者(41)に手製の銃で撃たれた。

山上容疑者は、演説当初は安倍氏背後にあるバスターミナルにいた。その後歩道に出てきて、背後から5~7メートルの位置まで近づきながら2発発砲したが、バスターミナルには、統括役の県警の私服警察官1人がいただけだったという。

警護計画によると、統括役は安倍氏の背後を含めた全体を見る役割だったというが、増えてきた安倍氏前方の聴衆を警戒し、山上容疑者が発砲するまで、その存在を確認できず、機能していなかったという。

一方、ガードレール内には警視庁のSP1人と県警の警護員3人が配置され、警護員の1人が後方を見る役割だったが、この警護員も安倍氏のすぐ後ろを通る自転車や台車のほか、増えてきた安倍氏前方の聴衆を気にし、山上容疑者を見ていなかった。

当日の警護は、県警本部や現場を管轄する奈良西署での指揮役らを含め総勢二十数人体制で、実際に現場に投入されていたのは十数人だった。十数人は全て私服警察官で、制服警察官はおらず、安倍氏前方で歩行者や聴衆の交通整理などにあたっていたのは選挙事務所が雇った民間警備員5人だった。

安倍氏後方の道路などは交通量が激しく、警察庁は制服警察官の配置も検討すべきだったと判断。配置されていれば、犯行の抑止効果や、接近する山上容疑者の存在に気づいていた可能性もあったとみている。

安倍氏は予定を急に変更する形で事件前日の7月7日に奈良入りを決定。県警は同じ場所で6月25日に演説した自民党の茂木敏充幹事長の時を参考に警護計画を立て当日朝に鬼塚友章本部長が最終承認していた。

警察庁は、この警護計画の作成にあたり、県警が茂木幹事長のケースなどを安易に踏襲。制服警察官も同様の演説の場合は過去に配置していなかったし、県警の危機感が薄かったとみている。

安部氏警備計画、安易な前例踏襲や危機感欠如が浮き彫りに 警察庁検証


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