横浜中華街に点心自販機 隣接の工場で手作り、こだわり「小籠包」好評

横浜中華街にある点心自販機=横浜市中区
横浜中華街にある点心自販機=横浜市中区

横浜中華街にある点心料理の冷凍自販機が人気を集めている。手軽に本格的な小籠包などを味わえると好評で、設置から1年以上がたった現在も遠方から買い求める客もいるという。新型コロナウイルス感染拡大で飲食業を取り巻く環境が厳しい中、アイデア勝負で新たなビジネスチャンスを切り開いている。

中華街のパワースポット「関帝廟」から南へ徒歩30秒。点心自販機は、中山路沿いに「大珍食品公司」の看板を掲げ、「大珍」ブランドで点心の製造・卸売りを手掛ける会社「全」(横浜市中区)の工場脇にひっそりと置かれている。

全て国産の肉や野菜

商品ラインアップは小籠包1袋(12個1千円)、豚肉焼売1袋(同1200円)のほか、豚まん1個(350円)など。いずれも隣接する工場で職人が手作りしている自信の逸品だ。自販機を設置した全の陸定全社長は「目立たない場所にあるが、見つけるのを楽しみながら買いに来てくれるお客さんもいる」と笑顔を見せる。

全は横浜中華街のシンボル「善隣門」近くにある中華店「大珍樓」(同)の関連製造会社。全て国産の肉や野菜を使い、化学調味料は使用しないなど食材にこだわり、職人が手作業で小籠包、肉まんなどの点心を製造している。

全が自販機での販売に乗り出したのは、新型コロナ感染拡大で苦境に立たされたことがきっかけだった。近年、大珍樓向け以外にも、高級レストランなどに販路を拡大してきたものの、令和2年年明けのコロナ感染拡大で一転、納入停止に追い込まれた。

味や製法にこだわり

積みあがった在庫を売りさばくために自社通販サイトを立ち上げて急場をしのぎ、3年5月から挑戦したのが自販機での販売だった。自販機は当初こそ反応は小さかったものの、徐々に売り上げが上昇。24時間営業の強みを生かして朝は地元住民、昼から夕方は会社員と時間帯ごとのリピーターもつくようになった。

今年4月にテレビの情報番組で紹介されたり、交流サイト(SNS)で話題が広がったりすると、1日に3、4回商品補充に追われるほど販売数量が増えたという。高い人気を支えているのが、冷凍食品でありながら本格的な味や製法にこだわったことだ。

工場では職人が肉や野菜を混ぜて丁寧に詰めたり、皮で包んだりしている。小籠包は1個ずつ皮のヒダの形や大きさが違うのが分かるほどだ。

皮とあんの隙間に余裕を持たせながらあんを詰め、適度な強さで皮で包むことによって、食べたときにやわらかい食感に仕上がる。また、素材のうまみを生かした調理も徹底している。

新たなファン獲得を

小籠包の具のつゆを作るには通常ゼラチンを使うが、全は鶏の足などを煮込んだ煮こごりのスープを使う。「本格的で自然な、深い味わいを感じてほしい」(陸社長)とのこだわりからだ。

全はかつて、安く大量生産できる機械化を検討したこともあったという。ただ、価格競争への不安と商品の差別化が難しいと判断し、味と品質で勝負する現在の戦略を決断。今ではその味と品質が高級中華料理店やホテルレストランに採用されるなどプロの料理人らからの評価も高い。

自販機販売が好調なのも、そうした高付加価値戦略が結果的に奏功した格好だ。現在のところ横浜中華街で点心を自販機で販売するのは全のみ。

今後は新たな商品も加えたりしながら、リピーターの確保と新たなファン獲得を目指す。陸社長は「今まで接点のなかったお客さんの声が聞けたり、ヒントをもらえたりした。今後も自販機を活用し、ビジネス拡大に挑戦したい」と意気込んでいる。

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