第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が7月20日に開かれ、賞創設以来、初めて候補者全員が女性となった芥川賞は高瀬隼子(じゅんこ)さん(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)に決まった。選考会前後の心境などについて、高瀬さんが産経新聞に寄稿した。
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「芥川賞の選考会は16時から開始しますので、連絡が取れる状態でお待ちください」と言われていた。わたしは『おいしいごはんが食べられますように』の担当編集者と一緒に、喫茶店で待っていた。小説家になるまで知らなかったことなのだけど、担当編集者は(講談社の場合は)2人いて、1人は文芸誌『群像』で担当を、1人は単行本の担当をしてくれている。いつも2人に相談できて心強いが、選考結果を待つにあたっては、2人がかりでいていただくのが畏れ多くもあった。ちょうど1年前、前作の『水たまりで息をする』が芥川賞候補になり、落選した時にも、集英社の担当編集者2人に「まあまあまあ…」と全力で仰っていただき、恐縮の限りであったので、今年もまたこれがあるのか、と憂鬱だった。