100歳時代

シニアの勉強法、予復習で効果的に 何歳から始めても大丈夫

資格試験の合格や外国語のマスターなど、何か勉強を始めたいと思っているものの「記憶力が衰えた自分には無理なのでは…」などと諦めているシニアも少なくないかもしれない。だが、16万人を超える脳の磁気共鳴画像装置(MRI)の画像を見てきた専門家は「年をとったからできないということはない」と言い切る。知的好奇心を刺激し、予習・復習を行うことで、効果的な勉強ができるという。

知的好奇心が大事

瀧靖之・東北大加齢医学研究所教授
瀧靖之・東北大加齢医学研究所教授

「脳の機能はゆっくり低下するものの退化するわけではないので、(勉強は)何歳から始めても大丈夫」と語るのは、東北大加齢医学研究所の瀧靖之教授。脳の画像の解析などを行い、認知症の発症予防について研究している。

瀧教授によると、年齢にかかわらず脳内では神経細胞同士がつながり、新たなネットワークが作られ、「不要なものは省き、必要なもの(結合部)は太くする〝最適化〟が常に行われている」と話す。

加齢により、最適化の速度自体は若い人よりも時間はかかるものの、コツコツ努力して刺激を与え続けることで、必要な領域のつながりを太くしてさまざまな能力を獲得することができるという。

ただ、脳の力を最大限に引き出すには、いくつかのポイントがあるとも。

まず大事なのは「知りたい」「学びたい」「達成したい」という知的好奇心。好き嫌いを判断する「扁桃体(へんとうたい)」という領域と、そのすぐそばにあって記憶にかかわる「海馬」が密接に関係すると考えられるため、知的好奇心を持って自発的に学ぶことが脳にとってプラスとなる。

瀧教授らのグループが平成12年から約8年間にわたり、20~80代の男女381人を対象に追跡したところ、アンケートで知的好奇心が強いとされた人は、脳の側頭葉と頭頂葉が接する領域(耳の上あたり)の萎縮が少なかったという。

側頭頭頂接合部は情報の記憶や操作にかかわる「ワーキングメモリー」のほか、思考や判断などの高次認知機能を担うとされ、加齢により萎縮することから、知的好奇心が脳の機能の維持向上に重要であることを示している。

知的好奇心を育むために瀧教授が勧めるのが、「何のために勉強するかを明確にすること」だ。例えば「英語能力テストで高得点をとる」を目標にするよりも「英語力をつけて○○で活躍する」など、「勉強した先」の自分の夢や姿を描くことがそれに当たる。


学習と休憩交互に

学習した内容を定着させるには「5分や10分でもかまわないので、予習と復習を行ってほしい」と強調する。さらに1回の学習で覚えられないからといって、悩まなくていいという。というのも「忘れる」ことは、トラウマなどにさいなまれるリスクが減るなどのメリットもあり、生活していくうえで重要な側面もあるとされるからだ。

このため、学習の際は繰り返しによって定着させることを基本とし、前日と前々日の2回分をさっと復習して、その後も週末や月末などの時間のある際、折に触れて復習することを勧める。繰り返しの効果は、10桁前後ある自宅や自分の携帯の電話番号を意識しなくても覚えられることからも明らかだからだ。

また、予習の効果についても「知っていること」は知らないことに比べて〝好ましい〟と脳が判断し、頭に入りやすくなるとされることから「その日の学習分を少し削ってでもやる価値がある」と話す。

瀧教授は、人間の集中力が続く25分の学習と5分の休憩を交互に行う「ポモドーロ法」を勧めるが、それを基本に、各セットの学習時間の25分をさらに5分と20分とに分け、5分間を予習や復習に、残りの20分間をその日の学習に充てる独自の方法も紹介する。

また、睡眠の重要性も指摘する。「眠っている間に記憶したものを定着させ、脳の老廃物を洗い流すとされている」ことから、「7時間程度の睡眠時間を確保してほしい」。瀧教授自身も、どんなに忙しくてもできる限りそれに近い睡眠時間を確保しているという。(山本雅人)

会員限定記事会員サービス詳細