【台北=矢板明夫】2日夜に台湾を訪れた米国のペロシ下院議長は3日、台北市内の総統府を訪れ蔡英文総統と会談した。台湾海峡情勢や今後の米台関係などについて意見交換する。会談に先立ちペロシ氏は台湾の立法院(国会に相当)を訪れ、立法委員(国会)らと交流した。ペロシ氏は「米国の議会では党派を超えて台湾を支持している。これからは互いの交流を深めていきたい」と述べた。
ペロシ氏は同日午後、景美人権園区(人権博物館)を訪問し、台湾亡命中の中国の反体制活動家、香港の民主化活動家、台湾の人権問題関係者らと面会する予定。
台湾メディアによると、ペロシ氏と面会するのは、ウイグル人民主化活動家で、1989年の天安門事件の際、学生リーダーだったウアルカイシ氏、中国で5年間投獄され4月に釈放されたばかりの台湾の人権活動家、李明哲氏。中国の治安当局に不当拘束された経験をもつ香港の銅鑼湾書店の元店主、林栄基氏ら。中国の人権問題などについて意見を交換するとみられる。
ペロシ氏が台湾に到着した直後の2日夜、台湾で最も高いビル「台北101」の壁面には「アメリカと台湾の友好は永遠」「ありがとう、ペロシ下院議長、台湾へようこそ」などとの歓迎メッセージが点灯された。
ペロシ氏一行が宿泊している台北市内のホテルの前には2日夜、米国国旗などを手にした民衆が集まり、ペロシ氏の訪台を歓迎した。一部の親中派団体のメンバーはペロシ氏の訪問に反対し、ホテルの近くで「台湾から出ていけ」などと書かれたプラカードを掲げ抗議した。
一方、台湾の国防部(国防省)は3日未明、中国軍機延べ21機が2日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表した。台湾軍は緊急事態に対応するため、2日から4日正午まで「戦備強化期間」に入り、台湾周辺の安全を確保するために海と空を警戒する兵力を増強した。
また、台湾の総統府のサイトは2日、海外から大量のデータを送りつけられるサイバー攻撃を受けた。攻撃のデータ量は通常の200倍にのぼり、サイトの表示が一時できなくなったが、約20分後に復旧した。サイバー攻撃はペロシ氏の台湾訪問に対する嫌がらせの可能性がある。