「全数把握」に早期見直し圧力 感染状況悪化恐れる政府

松野博一官房長官(矢島康弘撮影)
松野博一官房長官(矢島康弘撮影)

政府が新型コロナウイルス対策をめぐって難しい判断を迫られている。専門家有志が感染者を全て国に報告する全数把握の見直しなどを提言したためだ。政府は新型コロナの感染症法上の扱いを含め、「第7波」収束後の見直しを検討していたが、自治体や医師会からは早期の見直しを求める声が強まっている。ただ、急激な方針転換で混乱や感染状況の悪化を招けば政府に批判が向く恐れもあり、報告内容の簡素化などでしのぐ構えだ。

「さらなる対応について時機を逸することなく、適時適切に具体的な検討を進めていく」。松野博一官房長官は3日の記者会見で、専門家有志の提言についてこう述べた。政府は、保健所などを通じた全数把握は維持しつつ、医療機関が国や自治体に報告する内容の簡素化を図る方向で調整している。

政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は2日、全数把握を見直し、入院患者ら重症化リスクが高い人の情報把握に絞り込むよう政府に求めた。感染者の急増で保健所や医療機関の負担が大きくなっているためだ。

2日には全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)と日本医師会の松本吉郎会長も後藤茂之厚生労働相に全数把握の早期見直しを要望しており、〝外圧〟は強まっている。

政府は、「2類相当」として厳格な措置が求められる新型コロナの感染症法上の扱いの見直しを、第7波収束後に検討する考えを示してきた。岸田文雄首相は7月29日の産経新聞のインタビューで、「感染者が増えている今の状況で変更は考えない」と述べた。

政府関係者は専門家有志の提言について「反対している専門家もいる。全数把握をやめれば対策の元になるデータが得られなくなる」と反論する。対策をいったん緩めると、毒性の強い変異株が現れた際に有効な手立てを講じられなくなるとの警戒感も根強い。

コロナ対策について、首相は昨年10月の政権発足以来、専門家の意見や自治体との協力を重視してきた。ただ、第7波の対応では、足並みの乱れが浮き彫りになりつつある。

内閣府幹部は「感染収束まで見直しは待って、なんて悠長なことは言えなくなった」と打ち明けた。(竹之内秀介)

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