結局は「他人事」でいいのか
去る7月22日の閣議で報告、了承された最新版の『防衛白書』(防衛省刊行)は、「ロシアによるウクライナ侵略」と題した新たな章を設け、13ページにわたって、関連情勢を解説した。そのなかで、「ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反」と断罪し、こう述べた。
「多数の無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反、戦争犯罪であり断じて許されない」「このようなロシアの侵略を容認すれば、アジアを含む他の地域においても一方的な現状変更が認められるとの誤った含意を与えかねず、わが国を含む国際社会として、決して許すべきではない」
そのとおりだが、問題は具体的に、どう対応するか、である。『防衛白書』は「許されない」「決して許すべきではない」と書くが、「決して許さない」とは書かない。「されない」という受動形の表現や、文字どおりの「べき論」に終始している。よく言えば客観的な表現だが、それは政府として「許さない」という意志表示ではない。要するに他人事ではないか。将来の日露関係を見込んだ外交的な配慮かもしれないが、これでは、ロシアの行動を修正させる効果は期待できない。米国を始めとする欧米諸国はロシアに対する武力行使は行わなくとも、ウクライナに武器を供与し、侵略を「許さない」という意志を具体的行動で示しているが、日本はどうか。『防衛白書』はこう続けた。