朝晴れエッセー

あの日の笑顔・8月3日

猛暑で始まった今年の夏、暑さには閉口しますが、どこか開放的な夏は、子供の頃から嫌いではありませんでした。心浮き立つような気がするのです。

しかし、そんな夏でも、世界の不穏な情勢に目をやるとき、ふと心がふさぎます。特にこの数年は。

小学4、5年生の頃だったと思うのですが、ある日、授業の前に先生が、金君という男の子を伴って壇上に立ちました。北朝鮮に帰るので、皆とは今日でお別れというお話でした。

幼かった私には、それがどういうことを意味しているのか何もわかりませんでした。

後々、北朝鮮への帰国事業の一環での出来事だったのだと思い至りました。

生活のすべてが保障され、この世の天国のような国であるという宣伝に、家族ともども、希望に胸を膨らませての帰国だったのでしょう。

あれから六十数年、金君はどう生きてきたのでしょう。今、どのように暮らしているのでしょう。希望はかなえられたのでしょうか。

同じクラスだった頃のことは全く思い出せませんが、北朝鮮の国情、国民生活、そして、その当時帰国した方々のニュースに触れるたび、先生の横に立っていた金君の姿が浮かび、その都度、悲観的な思いが広がっていくのを感じてきました。それは今も続いています。

目に浮かぶ金君の顔は、いつも満面の笑みをたたえているのです。

関本明美(73) 川崎市宮前区

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