【ニューヨーク=平田雄介】核拡散防止条約(NPT)再検討会議は1日、ニューヨークの国連本部で各国代表による初日の一般討論演説を行った。米国、英国、フランスはウクライナに侵攻したロシアに「核の恫喝」をやめるよう求める閣僚声明を発表。ロシア側は反論したが、各国の演説ではロシアへの非難が広がった。
米英仏の閣僚声明は、ロシアの動きを念頭に「軍事的な威圧、脅しのために核兵器を使用すると威嚇する者を非難する」と強調。米英仏露と中国の核保有5カ国が1月に発表した「核戦争回避が最重要責務」とする共同声明を履行するようロシアに求めた。
一方、ロシアの国連代表部は「NPTを順守してきた」とするプーチン露大統領の声明を発表して反論。声明は、5カ国の共同声明にある「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」との記述を引用し、「全世界の国の安全保障を支持する」と主張した。
だが、プーチン氏はウクライナ侵攻を開始した2月24日の演説で、ロシアの核兵器に言及し、他国が干渉しようとすれば「歴史上遭遇したことのないような結果につながる」と威嚇している。
このため会議では、グテレス国連事務総長がウクライナ侵攻に言及し、「人類は広島と長崎の惨禍から得た教訓を忘れかけている」と懸念を表明。続く各国代表の一般討論演説でも、スロベニア、デンマーク、ニュージーランド、モルドバなど多くの国がロシアを名指しで非難した。
広島が地元の岸田文雄首相も「ロシアの行ったような核兵器による威嚇はあってはならない」と批判。ブリンケン米国務長官は「われわれの世界に強制や威嚇、恐喝に基づく核抑止の居場所はない」と訴えた。
また、バイデン米大統領は1日、再検討会議に合わせて声明を出し、2026年に期限が切れる米露の新戦略兵器削減条約(新START)について「新たな交渉をする用意があるが、積極的で誠実なパートナーが必要だ」と強調。核戦力を増強する中国にも「リスクを軽減する交渉に関与する責任がある」と述べた。
各国の一般討論演説でも7度目の核実験の準備を終えたとされる北朝鮮、核合意の再建交渉が難航するイランとともに、中国への懸念が示され、核戦力の情報開示を求める声が相次いだ。これに対して中国の張軍国連大使は1日の記者会見で、世界の核弾頭数の9割を占める米露を念頭に「最大の保有国が真っ先に(透明性を高める)役割を果たすべきだ」と主張した。
再検討会議は26日まで開く。1~4日に各国代表が演説した後、①核軍縮②核不拡散③原子力の平和利用のテーマ別に議論するが、米国と露中の対立を背景に、全加盟国共通の目標を掲げる最終文書の採択を危ぶむ声もある。