まだ着られる中古衣類の寄付で障がい者スポーツ(パラスポーツ)を応援する「ふくのわプロジェクト」(産経新聞社主催、オフィシャルパートナー・富士紡ホールディングス)は、応援先競技団体の一つ「日本パラバレーボール協会」の協力で7月7日、東京都中央区立佃中学校(志村昌孝校長)で、体験会を開きました。特集・パラバレー体験会(下)では、日本代表チームの監督や選手にお話を聞きました。
パラバレーを応援しようと思ってもらいたい
■女子日本代表チーム監督・真野嘉久さん(57)
講師を務めた真野さんはパラバレーボール協会会長や男女代表監督を歴任する傍ら、子供たちへの普及活動にも力を入れてきた。
「体験会では必ず現役選手も参加します。子供たちにはまず、選手の顔とニックネームを覚えてもらいます。選手と一緒に練習し、友達のように感じてもらうことで、パラバレーを応援しに行こうと思ってもらいたいからです」
この日も、指導した高砂進、長田まみ子両選手に生徒たちが「グルくん」「まみちゃん」と呼びかけるシーンがあった。
パラバレーは車いすを使わないため、健常者と障がい者が同じ〝土俵〟でプレーできるのも魅力の一つ。健常者の真野さん自身、大学までバレーボールに打ち込んできたが、社会人になってパラバレーと出合い、障がい者とともに競技する面白さに取りつかれたという。
義務教育の体育にパラバレーを|。全国の小中学校で体験会を開いている真野さんはそう願う。
「事故や病気で脚を失っても、高齢になって足腰が弱ってもチームプレーを楽しめる。誰もが楽しめる『一生涯スポーツ』であることを子供のころから知ってもらいたい」
「得るものがたくさんある」
■男子日本代表・高砂進さん(48)
20歳のとき、交通事故で左脚を切断した。就職後、先輩に誘われ見学したパラバレーボールの練習で、中学時代、バレーボール部員だった感覚がよみがえった。
基礎があっただけにみるみる実力を伸ばし、日本代表入り。パラリンピックは北京と東京大会に出場した。「東京では関係者やボランティアとして会場へ来てくれた仲間が大きな拍手をしてくれ、アットホームな雰囲気でプレーできた」
健常者もいつ障がい者になるか分からない。それを悲しむのではなく、得るもの、やれることがたくさんある。それを教えてくれたのがパラバレーだった。
今後の目標は選手としてパリ大会への参加と、仲間を増やして選手層を厚くすることだ。自身の練習の合間に、地元、埼玉県川口市で普及活動に励む。
スピード感の面白さ、拾ってつなぐ楽しさ
■女子日本代表・長田まみ子さん(55)
「つないで~。ナイス!」。練習の輪の中で明るく生徒たちを鼓舞した。北京、ロンドン、東京とパラリンピック3大会に出場したベテランだ。
20歳のときに骨肉腫で右脚を切断したが、中学高校で運動部に所属してきたスポーツ好きだけに、パラバレーにのめり込んだ。
「コートに座っていると球が速く見えるスピード感が面白い。ボールを拾ってつなぐ楽しさもある」
東京パラリンピックは負傷して試合にほとんど出られず、悔いが残った。新チームでは、経験豊富なセッターとしてパリ大会を目指す。
「子供たちと触れ合うたびに、このスポーツをやってきてよかったと思う。子供たちにも、何かチャレンジできるものを見つけて、続けていってほしい」
撮影:三尾郁恵
文:篠原那美、慶田久幸
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衣類寄付でパラスポーツを応援 「ふくのわプロジェクト」
「衣類のリユースでパラスポーツを応援しよう」を合い言葉に活動を続けるふくのわプロジェクト。家庭などからまだ着られる衣類を寄付してもらい、専門業者に売却し、収益金でパラスポーツの競技団体を応援している。寄付された衣類は選別され、東南アジアを中心に世界15カ国で販売される。2016年のスタートから、これまでに約673トンが集まり、約1020万円が競技団体などに寄付された。
ふくのわでは活動を通じたSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指しており、運送の効率化による二酸化炭素排出の抑制や障がい者施設への仕事の発注、小中高校で環境教育なども展開している。
衣類を寄付するのに便利な宅配キット「おうちでふくのわ」(税込み2500円)を販売しているほか、段ボールでの送付や倉庫への持ち込みもできる。
衣類の寄付は〒300ー0726 茨城県稲敷市西代703 ふくのわ係。送料は寄付者でご負担ください。