北川信行の蹴球ノート

動画で話題に…「モチベーター」セレッソ小菊監督の〝心奮い立つ〟名言集

練習で選手を指導するセレッソ大阪の小菊監督©️CEREZO OSAKA
練習で選手を指導するセレッソ大阪の小菊監督©️CEREZO OSAKA

サッカーJ1で今、最も芯が通っている、戦い方がぶれないチームの一つがセレッソ大阪だろう。直近6試合負けなし。過密日程や新型コロナウイルス禍で、どのチームもメンバー編成などに苦労する中、ハードワークと献身性、誰が出ても変わらないパフォーマンスを武器にJ1の4位(8月2日現在)につける。

そんな好調な桜軍団のサポーターの間で話題となっているのが、チームを率いる小菊昭雄監督(47)が試合の前後にロッカー室で選手たちにかける熱い言葉だ。動画投稿サイト「YouTube」の公式チャンネルで、試合時の舞台裏の様子などをまとめた番組「BACKSTAGE PASS」をつくって、その中で取り上げたところ、反響を呼ぶようになった。人気ぶりを受け、公式チャンネルでは7月下旬に「【心に残る名セリフ集】小菊監督の印象に残るメッセージをまとめてみた」とのコンテンツをアップ。同チャンネルでは「選手たちへのメッセージを小菊語録としてまとめてみました。心が奮い立つ魔法の言葉をごらんください」と紹介している。

多彩な歴代監督に仕え、自身の戦術磨く

就任2年目の小菊監督は、変わった経歴を持っている。以前にもこの連載で紹介した

昨年11月アップ 『アルバイトから指揮官に、抜群の求心力持つC大阪・小菊監督は前を向く』

が、選手としてプレーしたのは大学時代まで。卒業後にアルバイトのスクールコーチとして就職したセレッソ大阪一筋で、育成年代の指導者やスカウト、強化部のスタッフなどさまざまな仕事をこなしてきた。

特にトップチームのコーチ時代には、若手育成に定評があり、自由奔放な攻撃サッカーを志向したブラジル人のレビー・クルピ氏▽チームにハードワークと勝負強さを植え付けてルヴァン・カップ優勝と天皇杯全日本選手権制覇の2冠をもたらした韓国人の尹晶煥(ユン・ジョンファン)氏▽組織的な守備とオートマチックな逆襲を組み合わせた手堅いサッカーでアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得したスペイン人のミゲルアンヘル・ロティーナ氏-といった特徴も性格も異なる歴代監督を身近で支えるとともに、選手を献身的にサポートしてきた。

そうした経験が冒頭に挙げたアグレッシブな戦術面だけでなく、チームビルディングや人心掌握といった面でも今につながっている。小菊監督自身も「特にどの監督というわけではなく、いろんな監督の影響を受けてきました」と正直に話す。

真摯(しんし)な態度、熱のこもった口調

ここで、「【心に残る名セリフ集】小菊監督の印象に残るメッセージをまとめてみた」の動画で取り上げられている言葉をいくつか紹介する。

「今年いろんなことを俺らはクリアしてきた。今年はそういう年。俺らは必ず今日勝てるから」(4月2日川崎フロンターレ戦、結果〇4-1)

「上位争いの景色をみんなで見ていこうと言ったけれど、優勝争いの景色をみんなで見ていこう」(5月25日浦和レッズ戦、結果〇2-0)

「最初から100%でやってほしい。80%、90%はいらないよ。最初から100%で出し切ってバトンを渡せ」(5月29日湘南ベルマーレ戦、結果〇2-0)

「よそいきのサッカーしないよ。ずっと積み上げているサッカーを今日もやる。チームの勝利のためだけ」(7月16日ガンバ大阪戦、結果〇2-1)

大阪ダービーの試合後、選手らと喜ぶセレッソ大阪の小菊監督(撮影・斉藤友也)
大阪ダービーの試合後、選手らと喜ぶセレッソ大阪の小菊監督(撮影・斉藤友也)

決して、難しい言葉やことわざ、言い回しを使っているわけではない。しかし、真摯な態度、熱のこもった口調で真正面から訴え、選手の心をつかんでいるのが分かる。

豊富な経験で磨かれた対機説法

そんなモチベーターでもある小菊監督の言葉のマジックは「マンツーマン」の場面でも発揮されている。端的だったのが、7月13日にヨドコウ桜スタジアム(大阪市東住吉区)で行われた天皇杯全日本選手権4回戦の名古屋グランパス戦。タイトな日程が続く中、右サイドバックで久々に先発起用された進藤亮佑が攻守に奮闘。1-1の試合終了間際には抜群のアーリークロスで為田大貴の鮮やかな決勝ボレーをアシストした。

試合後の記者会見で、小菊監督はセンターバックが本職の進藤が出番を得るために日々の全体練習後にクロスを上げるトレーニングをコツコツと繰り返していることを明かして「練習は噓をつかないので」と説明したが、進藤によると、起用を告げられたのは数日前。負けん気の強い進藤の性格を踏まえ、退路を断つように仕向けて奮い立たせる狙いがあったのではないかと振り返った進藤は「ここで(結果を)出せないと、そこまでの選手ということ」とサッカー人生をかけて試合に臨み、際立ったパフォーマンスを披露した。

プロ野球界の名将だった故野村克也氏は「人を見て法を説く」と選手指導の極意を話していたが、小菊監督も選手個々の性格や特徴に応じ、指導する際の接し方やしゃべり方などを変えているという。

以前、練習公開後の取材対応の際に小菊監督にその見極め方を尋ねると、「自分の目で見て、スタッフから話を聞いて、いろいろな方法で選手の状態を把握するようにしています。どう指導をしていくかは、これまで選手に寄り添うようなことを長くしてきましたし、すべてが決してうまくいったわけではありませんし、失敗した方が多かったかもしれませんが、そういう経験から得られたもので判断しています」との答えがかえってきた。

そういう謙遜ぶりも、苦労人の小菊監督らしい。豊富な経験で磨かれた対機説法も武器に、異色の指揮官が名将への道を歩み始めている。

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