米、威信かけた対テロ作戦 ザワヒリ容疑者殺害、周囲の被害回避

国際テロ組織アルカーイダの指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者(AP)
国際テロ組織アルカーイダの指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者(AP)

バイデン米政権が1日、国際テロ組織アルカーイダの最高指導者、ザワヒリ容疑者の殺害を発表した。政権は作戦に踏み切るまでに慎重な情報収集と分析を積み重ねた。昨年8月のアフガニスタンからの米軍撤収による混乱で傷ついた米国の威信を回復させるには、失敗は許されなかった。(ワシントン 大内清)

米政府高官が1日、記者団に明らかにしたところでは、米情報機関は数年前からザワヒリ容疑者の潜伏を支援するネットワークを追いかけていた。事態が動いたのは今年に入ってから。同容疑者の妻と娘、孫らがアフガンの首都カブール市内の民家に移り住んだことが確認され、そこに容疑者本人もいる可能性が高いと判明した。

ザワヒリ一家の潜伏には、イスラム原理主義勢力タリバンの最強硬派「ハッカニ・グループ」の協力があった。同グループ・トップのシラジュディン・ハッカニ師は、かねてアルカーイダとの密接な関係が指摘されてきた人物だ。

殺害作戦で重視されたのは、いかに周囲に付随的な損害を与えずにザワヒリ容疑者のみを排除するかだった。バイデン政権は昨年8月の米軍のアフガン撤収の際、大規模テロを起こしたイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)系勢力への報復としてミサイル攻撃を行い、誤爆で無関係な市民を犠牲にした痛恨の経験があるためだ。

数カ月間の情報収集で、ザワヒリ容疑者の生活パターンが割り出された。特に目を引いたのは、同容疑者が隠れ家のバルコニーで時間を過ごす習慣があることだった。この時を狙ったミサイル攻撃が立案された。

ホワイトハウス内のシチュエーションルーム(緊急対応室)には隠れ家の模型が運び込まれた。7月1日、中央情報局(CIA)のバーンズ長官やサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らから説明を受けたバイデン氏は、建物が倒壊する可能性などを詳細に質問。米国への渡航を待つアフガン人協力者らの出国に支障が出ないかなど、政治的影響についてもさらなる検討を指示した。

バイデン氏が作戦を承認したのは25日。現地時間31日朝、ドローンが放った空対地ミサイル「ヘルファイア」2発が、バルコニーにいるザワヒリ容疑者を襲った。直後にハッカニ・グループ幹部が同容疑者の家族を連れて立ち去ったという。

米政府高官は、テロ計画の立案などを担った〝頭脳〟を失い、「アルカーイダはテロ遂行能力に大打撃を受けた」と分析した。

会員限定記事会員サービス詳細