ロシアが侵攻したウクライナで穀物の輸出が滞留していた問題で、両国の協議を仲介したトルコ政府は1日、輸出再開の第1便が黒海に面するウクライナ南部オデッサの港を出航したと述べた。AP通信などが報じた。ウクライナは屈指の穀物輸出国で、高値が続く食料価格の緩和につながるかが注目される。
出航したのはシエラレオネ船籍の貨物船「ラゾニ」で、トウモロコシ2万6千トンを積んで中東レバノンに向かう。2日に到着予定のトルコの港では「合同調整センター」の担当官から積み荷などの検査を受ける。
センターの設置は7月22日、ロシアとウクライナが仲介役の国連、トルコと合意した項目の一つ。4者合同で、黒海内の航行の安全監視に当たる。トルコは他の船も続いて出航するとの見通しを示した。
第1便の出航を受けてウクライナのクブラコフ・インフラ相は「世界の飢餓を防ぐために新たな一歩を踏み出した」と述べた。また、輸出再開で少なくとも10億ドル(約1300億円)の外貨収入が入るとし、来年の農業生産計画の策定にも意欲をみせた。
4者の合意はウクライナの3港が対象で、このうち輸出拠点のオデッサでは露軍が海上封鎖を行う一方、ウクライナは露軍の上陸を防ぐため機雷を敷設し、大量の穀物が足止めされていた。国内の滞留穀物は2千万トンに上るとされる。
ロシアは輸出再開で合意した翌日の23日にオデッサをミサイルで攻撃しており、輸出が軌道に乗るかはなお予断を許さない。
ロシアとウクライナは小麦やヒマワリ油の世界有数の輸出国で、両国に農産物を依存する中東・アフリカなどでは、食料不足の懸念から経済が悪化するなど問題が国際的に広がっていた。