損害保険大手のあいおいニッセイ同和損害保険が、一定規模以上の災害で避難所に避難した場合に損害の有無にかかわらず一時金を支払う特約を、10月から個人向けの火災保険に付けることが30日、分かった。災害で損害が発生しなくても補償するのは大手損保で初めて。災害が頻発・激甚化し避難の遅れが課題となる中で、早期の避難を促す。
新たな特約では、契約者が災害発生に伴い避難所に避難した場合、一律で1万円を支払う。家財の損害が出たかどうかは関係なく、避難をしていれば対象になる仕組みだ。実際に損害が出た場合はその補償に加えて、さらに1万円が支払われる。死者が多数出た場合などに政府が指定する「特定非常災害」の対象となった風水害や、震度6強以上の地震などで適用される。
この特約は、個人向け火災保険「タフ・すまいの保険」の家財を対象とする契約に自動で付与され、追加の保険料は発生しない。申し込みは8月中旬からで、補償は10月から始める。既存契約者については10月以降の契約更新のタイミングで付与されることになる。
あいおい損保がこうした特約を設けるのは、災害時の避難意識の低さや、避難行動の遅れが社会的な課題になっていることが背景にある。250人以上の死者が出た平成30年の西日本豪雨では、データが残る自治体のうち、実際に避難した人の割合は平均で5%以下にとどまっていた。特約で一時金の支払いを担保することで、早期避難と被害の軽減につなげたい考えだ。