エネルギー安保の議論は深まらず 日米の重点分野に隔たり

米ワシントンで29日に初めて行われた日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)の終了後に発表された共同声明には、エネルギー安全保障分野の協力も盛り込まれた。だが、細部の議論が深まったとはいいきれない。ウクライナ情勢を受けたエネルギー安保の重要性についての認識は一致したが、日米双方が重視するテーマに隔たりがあるためだ。エネルギー安保における日米の具体的な連携は次回会合以降の課題となりそうだ。

「共同声明と同時に課題ごとの具体的な行動計画も発出できたのは大きな成果だ」。会合後の共同記者会見で萩生田光一経済産業相はこう強調した。

ただ、今回の会合では、先端技術の研究開発やサプライチェーン(供給網)強化に比べて、エネルギー分野の議論が低調だったとの印象は拭いきれない。萩生田氏は会議とは別にレモンド商務長官、米通商代表部(USTR)のタイ代表と個別に会談したが、米エネルギー省のグランホルム長官との個別会談は行われなかった。

萩生田氏はエネルギー分野についても会合で説明したとする。だが「グランホルム氏や先進7カ国(G7)各国(エネルギー担当相)には説明してきた」とも述べ、新しい議論は事実上なかったことがうかがえる。

背景にあるのは、エネルギー分野における足下の課題に関し、日米の認識に違いがあるためだ。

米国の当面の重点課題は、対露制裁強化につながる露産石油の価格上限設定(プライスキャップ)や国内のガソリン価格安定につながる原油の安定調達だ。

一方、日本はロシアにおける石油・天然ガス開発事業「サハリン2」からの液化天然ガス(LNG)の供給途絶に対する備えが最大の懸案事項だ。電力の需給逼迫(ひっぱく)や物価高対策にも関係するテーマで、産ガス国の米国に増産を求めている。

このため、共同声明では中長期の脱炭素化の必要性という日米間で争いがない部分について「エネルギー不安による困難に直面する中で、気候危機に対処する必要性を確認した」との記述に留まった。

とはいえ、ウクライナ危機の収束に向けた対露制裁の強化やエネルギー安保で日米が連携を強化すべき分野は多い。経済版2プラス2という新たな枠組みを活用し、エネルギー分野で日米の連携の実効性を高めるための、具体的な取り組みが今後、双方に求められることとなりそうだ。

中国念頭、経済的威圧に対抗へ共同声明 日米経済版2プラス2

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