29日閣議了解された令和5年度予算の概算要求基準は、防衛費や少子化、脱炭素などには具体額なしで要求できる事項要求を認め、重要施策への予算の重点化を図る。ただ、ウクライナ危機による物価高や経済安全保障など、外部環境の変化に伴うリスク要因への目配りも欠かせず、各省庁や与党からの歳出圧力は高まっている。概算要求基準は10年連続で上限が示されず、5年度予算規模は拡大が続きそうだ。
財務省は概算要求基準を「施策の優先順位を洗い直し、予算の大胆な重点化を促す」(鈴木俊一財務相)仕組みと位置付けており、かつては「シーリング(天井)」と呼ばれる歳出総額の上限が設けられていた。
しかし近年は総額は示されず、費目別に要求額の目安を示している。今回は新しい資本主義の関連施策を優遇する重要政策推進枠を設け、防衛、少子化、脱炭素などは要求額に上限を設けない。予算はむしろ肥大化しやすい建付けだ。
政府が基準案を示した27日の自民党政調全体会議でも、物価高を助長する円安や経済安全保障といった課題ついて、柔軟に対応するよう出席議員から注文がついた。実際にこれらの対応も基準の重要政策に追加された形となり、上限を設けない施策は今後も幅広に検討される可能性がある。
旺盛な歳出議論の背景には、前提となる今年の「骨太の方針」で、財政改革を推進すると記載する一方、与党内の積極財政派の反発に配慮して「ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と併記したことがある。
ただ、要求基準の例外が増えれば事実上の青天井になりかねない。9月以降の予算編成では財務省が各省庁の要求をどこまで精査できるかが焦点になる。
(加藤園子)