話の肖像画

「すしざんまい」喜代村社長・木村清(28)ヘミングウェイ杯で実力証明

2003年、国際トローリング大会「第53回ヘミングウェイ・カップ」に参加
2003年、国際トローリング大会「第53回ヘミングウェイ・カップ」に参加

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《回遊する本マグロを追い、世界中を飛び回ってきた。現地では調査のため、自ら本マグロを釣り上げることもある。ビジネスだけでなく、釣りの腕前も磨いてきた》


20年ほど前、フロリダ沖やバハマ沖で大物の本マグロが取れると聞いたので現地に行き、375キロの大物を釣ったのです。そのようすがテレビで放映されたのですが後日、テレビ局に「やらせじゃないか」という投書があった。そこで「何かの大会で結果を残せば、やらせでないことの証明になる」と、テレビ局から持ち込まれたのです。負けず嫌いの性格もあって、この提案に乗ることにしました。出場したのは2003(平成15)年6月にキューバで行われた「第53回ヘミングウェイ・カップ」です。

この大会は文豪アーネスト・ヘミングウェーが1950年に始めた歴史あるカジキマグロの国際トローリング大会で、この大会で日本人がカジキマグロを釣り上げたことはないという。会場に行くと驚きました。マイアミとかモナコなど世界の各地から、豪華なトローリング船が多数、集結している。70艇くらいいましたかね、だいたい1艇4人ずつなので300人くらいが参加していたと思います。相手は高速艇でこっちは現地でチャーターした漁船。カジキマグロの回遊先に着くのが遅れちゃうんですよ。

また開催前のパーティーで競技の説明があったのですが、釣り上げた魚についてブルーフィン・ツナ(クロマグロ)やカジキマグロは最高点の3点、サワラは2点などとあるなか、「ドルフィンフィッシュは1点」とあった。ドルフィンフィッシュとはそのとき、イルカだと思っていたのですが、実は現地ではマヒマヒといわれ、日本でいうとシイラのことなんです。でもそれを知らなくて、「イルカなんて釣れるわけない」と言っていたら、シイラがかかった。点数にならないから、と船に釣り上げてしまったのですが、ルールはキャッチアンドリリースなので1点の損失です。

またカジキマグロも3匹釣れたのですが、そのうちの1匹をテレビ番組の映像用で船に釣り上げてしまった。やはりこちらもノーカウント。結果は銀メダルだったんですが、あの4点があれば金メダルだったと思っています。用意してあった釣り糸が50ポンド用、25キロ程度の魚を釣る糸なんですが、それで130キロものマグロを釣るんです。だからうまくやらないと糸が切れてしまう。これ以上引っ張ったら切れる、と思うとリールを緩めたり、また引っ張ったりで、2時間も3時間もかけてカジキと格闘して釣り上げました。本マグロの一本釣りの技術が生きましたね。


《大会を機に、キューバの要人と親交を深めた》


大会後、ハバナ市内の政府関係施設で行われたパーティーで、本マグロの解体ショーを披露したんです。後で聞いたのですが、なんとその会場に当時のフィデル・カストロ議長が列席されていた。暗殺される危険性があり、変装していたとのことですが、まったく気がつきませんでしたね。後日、お会いする機会があり、「実はあのとき、会場にいて解体ショーを拝見した」と言われました。

このときのご縁で、カストロ議長の息子さん、アントニオ・カストロさんとは親交を深めています。アントニオさんはキューバ野球連盟の副会長を務めており、国際大会などで来日された際には必ず「すしざんまい」を訪ねてくださいます。日本で行ったアントニオさんの結婚式にも招待していただきました。キューバは本マグロだけでなく、ロブスターも取れるので、輸入させていただいてます。何が縁で人とのつながりが広がるか、不思議なことですね。(聞き手 大野正利)

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