「国際ロマンス詐欺」防ぐ 滋賀銀行員2人がお手柄

瀧岡英典署長(右)から感謝状を受ける西田智子さん(中央)と片岡順一さん=7月26日、滋賀県警甲賀署
瀧岡英典署長(右)から感謝状を受ける西田智子さん(中央)と片岡順一さん=7月26日、滋賀県警甲賀署

高齢者を狙った特殊詐欺事件の被害が滋賀県内で相次いでいる。今年上半期の被害額は昨年1年間の約1億4100万円に迫る1億3000万円超となっている。そんな中、特殊詐欺には分類されないが、高齢者を狙った国際ロマンス詐欺の被害を銀行員2人が機転を利かせて未然に防ぐというお手柄が滋賀県甲賀市内であった。滋賀県警甲賀署は26日、2人に署長感謝状を贈るとともに、「SNSやメールのやり取りだけで交際を匂わし、出会ったこともない人から金銭を要求されれば、すべて詐欺」と注意を呼びかけている。

瀧岡英典署長(右)から感謝状を受けた片岡順一さん(中央)と西田智子さん=26日、滋賀県警甲賀署
瀧岡英典署長(右)から感謝状を受けた片岡順一さん(中央)と西田智子さん=26日、滋賀県警甲賀署

署長感謝状を受けたのは滋賀銀行大原支店支店長代理の片岡順一さん(41)と同支店パート職員、西田智子(さとこ)さん(43)。2人の被害者に対する粘り強い説得が被害を防いだ。

日系女性軍医?

甲賀署によると、70代の被害男性が大原支店を訪れたのは7月11日だった。

窓口で西田さんに「振り込みをしたい。LINEで振込先が届いているから見てほしい」と携帯電話の画面を見せた。不審に思った西田さんは片岡さんに報告。2人が振り込み理由を聞いたところ、男性は次のように説明したという。

日系米国人の軍医、Yuki Davisと被害男性のLINEのやり取り(一部画像処理済み)
日系米国人の軍医、Yuki Davisと被害男性のLINEのやり取り(一部画像処理済み)

「SNSで知り合った日系米国人の女性軍医から、LINEで『退役し、日本に行きたい。退職金を預けたいので、退職金の輸送費用として速達なら148万円、通常輸送なら70万円が必要』などと依頼された」

日系米国人の軍医、Yuki Davisと被害男性のLINEのやり取り(一部画像処理済み)
日系米国人の軍医、Yuki Davisと被害男性のLINEのやり取り(一部画像処理済み)

2人は詐欺事件を疑った。特に西田さんは今年3月にも同様の国際ロマンス詐欺の被害を未然に防いでおり、事件を身近なものと感じていた。すぐに、男性の説得を始めた。

しかし、男性はLINEの内容を信じており、「自分が正しい。人助けをしたい」と当初は説得を受け入れなかったという。

粘り強い説得

片岡さんらの説得は、1時間以上続いた。順を追ってLINEの内容のおかしな点を男性に説明したという。例えば―。

「女性軍医が戦争地域のイラクにいるというが、すでに米軍はイラクでの戦闘任務を終了したのでは」

「イラクとの時差は6時間あるが、LINEの返事がすぐに来るのはおかしいのでは」

「退職金の郵送費用の送り先の口座が、日本人名なのは不可解では」

「Yuki Davis」名の女性軍医を装う者と男性のLINEのやり取りは、1カ月以上に及んでいた。親近感も抱いていたことから簡単ではなかったが、2人が粘り強く説得した結果、男性も不審点に気が付いたという。そして、甲賀署に通報して被害を未然に防ぐことができた。

片岡さんは、「顧客の財産を守りたいという思いだった」と振り返る。そのうえで、「ひとごとではなく国際ロマンス詐欺は、身近に起こるということをみなさんにも伝えたい」と話していた。

1800万円被害も

滋賀県警捜査2課によると、昨年の国際ロマンス詐欺の県内被害は把握しているだけで41件、被害額約2億2000万円。今年は7月25日の時点で29件、約1億9570万円にのぼる。

同課の井道盛輔(いみちせいすけ)次席は「中高年の男女独身が被害に遭うケースが多く、寂しさに付け込んでいる。結婚を匂わし、『2人の将来のためにお金をためましょう』などと投資などを持ちかける。SNSで知り合い、出会ったこともない人から金銭を求められるのはすべて詐欺と考えてほしい」と話す。

国際ロマンス詐欺への注意を呼びかける滋賀県警のチラシ
国際ロマンス詐欺への注意を呼びかける滋賀県警のチラシ

甲賀署管内では、今年5月にも無職女性(71)が外国居住の男性医師を名乗る者に計約1800万円をだまし取られる詐欺事件があった。今回同様、SNSを通じて知り合い、メッセンジャーアプリでやり取りしていた女性は「5年で1億8000万円ほどの報酬をもらう」「3週間後には日本にやってきて2倍にして返済する」などといった相手の言葉を信じていた。

今回の2人のお手柄について、甲賀署警務課の上杉明夫調査官は「被害男性を興奮させることなく、うまく説得してもらった。警察への連絡など2人の連係が被害の未然防止につながった」と感謝していた。(野瀬吉信)

国際ロマンス詐欺 日本人のほか外国籍の軍人や医師などを装い、マッチングアプリや出会い系サイトを通じて接触。仲良くなるとメッセンジャーアプリ(LINEなど)で連絡するようになり、数カ月の交流を続け、恋愛感情や親近感を抱かせて、投資や退役(退職)金受け取りなどの名目で送金させる詐欺。美男美女の画像をネットで拾い、身分を偽ってメッセージをやり取りするパターンが多い。1年以上かけて相手を信じさせるケースもあり、毎日「愛してる」とメッセージを送るなど準備が周到で最後までだまされていたと認めない被害者もいる。

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