北海道は28日、千島海溝・日本海溝沿いでマグニチュード(M)9クラスの巨大地震が起きた場合の被害想定を公表した。死者数は日本海溝沿いで発生した場合(最大M9・3)の場合で約14万9千人、千島海溝沿いで発生した場合(同M9・1)では約10万6千人だが「早期避難率を高めたり、津波避難ビルを活用したりすることで大幅に減らせる」(危機管理課)とした。道はハードとソフト両面の対策とともに、市町村と住民が共同で減災対応を進める必要性があるとしている。
国が昨年12月に公表した被害想定の推計手法を参考に、津波浸水域内における時間帯別の人口動態や建物所在地など、個別の実態をより反映した形で太平洋沿岸地域の38市町別にまとめた。被害は季節や時間帯で変化するため、①夏・昼②冬・夕③冬・深夜―の3パターンを設定。それぞれ千島海溝モデルと日本海溝モデルごとに想定した。
道の被害想定では、冬の夕方に日本海溝沿いで地震による津波が発生し、早期避難が全体の20%と低い割合にとどまった場合、死者数は最も多い約14万9千人になると推計する。同じ条件の「冬・深夜」は約13万9千人、「夏・昼」は約12万1千人。千島海溝モデルも約10万6千人~9万4千人の人的被害を想定する。
これに対し、早期避難率が7割と高く、呼びかけによって避難情報を効率的に伝達した場合、人的被害は5~9割ほど縮減できるとしている。
負傷者数も避難のタイミングと割合で大きく変わる。早期避難率が2割の場合、千島海溝モデルは1万4千人~5800人、日本海溝モデルは5200~4400人だが、7割の早期避難率で呼びかけも行った場合は千島海溝モデルが5200~4400人、日本海溝モデルは450~270人になると推計する。
冬・深夜の屋外避難で、低体温症のために対処が必要となる人数は日本海溝モデルが約6万6千人、千島海溝モデルは約1万5千人。避難者数については早期避難率が2割で「冬・夕」のパターンの場合、日本海溝モデルが約25万3千人、千島海溝モデルは約5万9千人とした。
道は、今回の想定結果について「しっかり対策を講じることで被害を減少できる」と減災に向けた取り組みの必要性を指摘。道民に対して「一人一人が主体的に避難するとともに、建物の耐震診断や耐震補強などの備えもお願いしたい」と呼び掛けている。