米下院議長の訪台観測、バイデン政権苦慮

【ワシントン=大内清】ペロシ米下院議長が近く台湾を訪問するとの観測が出ていることに関し、バイデン政権が対応に苦慮している。バイデン政権は、中国の威圧を受ける台湾への米国の関与強化を鮮明にする一方で、11月の中間選挙を前に中国の習近平体制を刺激し、米中間の緊張を不用意に激化させるのを避けたい考えがあるためだ。

ペロシ氏の訪台が実現すれば、1997年に訪台した共和党のギングリッチ下院議長(当時)以来、現職の議員では最高位の訪問となる。現在までに正式発表はないが、米メディアはペロシ氏周辺の話として、同氏が8月にも台湾を訪問する計画だと報じている。

ペロシ氏は今年4月にも訪台を計画していたが、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たため中止した経緯がある。

国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は27日、訪台するかどうかは「ペロシ氏が判断することだ」とした上で、ペロシ氏側に台湾をめぐる情勢や安全上のリスクなどについての状況説明を行っていると説明した。同氏が訪台を思いとどまるよう働きかけたとみられている。

ペロシ氏の訪台についてはバイデン大統領も20日、「今は良い考えではないと軍は考えている」と否定的な見解を示していた。台湾海峡をめぐる緊張の激化を懸念したとみられる。

中国国防省の報道官は26日、ペロシ氏が訪台したら「決して座視しない」と警告した。AP通信によると米国防総省は、ペロシ氏が訪台した場合にその搭乗機を護衛するため、艦船や戦闘機などの配置計画の策定を進めている。

バイデン政権は中国を「戦略的ライバル」と位置づけ、米国の対中競争力を高め、台湾への防衛支援を強化する一方、米中間の対立が軍事衝突に発展するのを避けるため「競争の管理」を追求し、首脳級を含む対話チャンネルの維持を重視している。

バイデン政権がインフレ緩和に向けて中国からの輸入品に課している制裁関税の一部撤廃を検討しているとされることも、ペロシ氏訪台への慎重姿勢の背景にあるとみられている。

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