写真紀行・瀬戸内家族

受験勉強も夏の光を浴びながら…

長男長女とも受験生だが今年も家族で島に帰省する。なんの疑念も持たずに以前そう記したが、思わぬ申し立てが長男からあった。大学受験の勉学に専念したいので今年は帰省を控えたい。ついては一人で東京に残りたい。そう言い出したのだ。これには耳を疑った。一体何を言い出すのだろう。

これが昭和の時代の父親だったら、ちゃぶ台を派手にひっくり返し、夏を堪能するよりも勉強を選ぶとは何事だ、そんな子に育てた覚えはない。今すぐ家を出て行け!と頰の一つも張り飛ばしているところだ。

だが今どきそんなことをしたら、家庭内暴力かつモラルハラスメントで訴えられるに違いない。そこで平静さを装いつつ、長男ににこやかに問いかけた。「ラーケーションって知っているか」「?」「ラーニング(学習)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語だよ。ワーケーションって知っているだろう。あれの勉強版。今どき青白い顔で机にかじりつくなんて時代遅れだよ」。

と、かような調子でいつも丸く収めてきたが、親の詐術もだいぶ通じにくくなってきた。さて、家族そろって今夏は帰省できるのか。今現在も不明だが、結果はきっと次回記せるはずだ。

小池英文(こいけ・ひでふみ)写真家。東京生まれ。米国高校卒後、インドや瀬戸内等の作品を発表。広島・因島を中心に撮影した写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。ウェブサイト「http://www.koike.asia/」

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