9月25日まで大阪市立美術館で開催中の「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」(産経新聞社など主催)の主な作品を5回にわたって紹介します。最終回の第5回はフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」です。
隠された手紙の意図
フェルメールは、画面構成の上手な画家だった。
彼は、自分の絵の購買層であるオランダの裕福な市民の暮らしを、丁寧な筆致で描いた。左の窓から取り込んだ光がライトのように使われ、人物に当てることで劇的な光景を作り出す。
そして、背景に画中画を掛けることで、人物の置かれている立場や状況を示すのである。例えば、手紙を読む女性の背後に嵐の中を航行する船が描かれていると、そのラブレターの中身は、恋の成就が困難である内容といった具合だ。
つまり、スタジオのような部屋の中の壁を飾っている絵には、画家の創作意図が暗示されているのだ。
この絵のキューピッドの画中画は250~300年前に何者かによって上塗りされ、手紙の意図も隠された。しかし、丹念な修復作業によって恋の仲介役は画家の思いとともに今によみがえったのである。(おわり)