山上容疑者、4カ月鑑定留置 「火薬乾燥用」昨春から賃貸契約

安倍晋三元首相が奈良市で演説中に銃撃されて死亡した事件で、殺人容疑で送検された無職、山上徹也容疑者について、奈良地検が精神状態を調べるための鑑定留置を請求し、22日付で奈良地裁に認められたことが関係者への取材で分かった。期間は11月29日までの約4カ月間。地検は鑑定結果を踏まえて起訴するかどうか判断する。

起訴されれば、公判では山上容疑者の刑事責任能力が争点となる可能性が高く、検察当局は本格的な精神鑑定が必要と判断したもようだ。7月29日が期限だった山上容疑者の勾留は、鑑定留置終了まで停止される。

一方、奈良県警は23日、山上容疑者が昨年3~9月、自宅マンションとは別に県内の集合住宅の一室を借りていたと明らかにした。山上容疑者は「(自作の)火薬を乾かすために借りた」と供述しており、県警は集合住宅の賃貸借契約をした昨年3月ごろから、火薬や銃の製作を本格化させたとみている。

県警によると、山上容疑者は集合住宅を解約した後の昨年11月から、同様の目的でシャッター付きガレージを借りていた。調べに対し「(部屋の)賃料が高くついた」と話しているという。賃料は集合住宅の一室が月額2万円台なのに対し、ガレージは月額約1万5千円だった。

再鑑定の可能性も

鑑定留置が決まったことにより、検察当局が担当医を指定し、これから犯行時の精神状態が詳しく調べられることになる。旧統一教会への恨みから安倍氏を銃撃したとする動機には「論理の飛躍」を指摘する声も多く、鑑定によって刑事責任能力があることを立証し、確実に有罪に持ち込むことが狙いとみられる。

山上容疑者は旧統一教会に対する恨みや幹部の殺害計画を口にする一方、安倍氏を銃撃したことは「政治信条への恨みではない」と供述。安倍氏が昨年9月、教団の友好団体にビデオメッセージを寄せたことで、山上容疑者は教団幹部から安倍氏に標的を変えたとされるが、捜査幹部からは変遷の経緯について「腑に落ちない」といった声も聞こえる。

起訴されれば裁判員裁判になるとみられるが、衆人環視のもとで行われた犯行のため犯人性や殺意の立証のハードルは低く、争点になるのは刑事責任能力の有無との見方が強い。

検察側にとっては、担当医を指定できる起訴前の鑑定留置で責任能力を確認できれば、有罪に持ち込む大きな補強材料となる。これに対し弁護側も、刑事責任を問われない「心神喪失」や刑が減軽される「心神耗弱」を主張し、起訴後に再鑑定を請求する可能性もあり、相反する結果が出ることもあり得る。

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