ハウステンボス再び正念場、売却見通しに期待と不安

ハウステンボス=3月、長崎県佐世保市
ハウステンボス=3月、長崎県佐世保市

旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が、長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス」(HTB)を売却する方向で調整していることが明らかになった。関係者によると、売却先は香港の投資会社、PAGを軸に検討が進められており、地元・九州からは今後の成長に期待の声が上がる一方、地元との関係が薄い外資系企業が経営主体となることに不安も広がる。幾度の危機を乗り越え、今年開園30年を迎えたHTBは、再び正念場を迎えることになった。

HTBは平成22年にHISの傘下に入り、株式は現在、HISが全体の3分の2を保有し、残りは九州電力、西部ガスホールディングス、九電工、JR九州、西日本鉄道の福岡経済界5社が保有している。売却方針について出資企業の幹部は「仕方がない。HISも新型コロナウイルス禍で業績が悪化している」と冷静に受け止める一方で不安ものぞかせた。「HTBの経営が再び悪化すれば、閉園も検討されるのではないか」

PAGは、大阪市のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)運営会社への出資でも実績を持つ。HTBは現在、入場者数の回復で業績が上向き、株式上場の準備も進めていることから、高値で取得するとみられ、出資企業の間では「条件がいい」と見る向きもある。別の出資企業幹部は「外資だからこそ、勝算があって購入を考えているのだろう」と述べ、HTBの今後の成長に期待を示す。

一方、佐世保市の朝長則男市長は報道陣に「事業を継続し、雇用を確保してもらえれば」と話した。朝長氏は過去の経営危機の際、HIS創業者の沢田秀雄氏に支援を要請するなど、閉園回避に尽力した。売却に関して、HTBの坂口克彦社長にメールで照会したが、詳細は分からないとの回答があったという。

HTBはオランダの街並みを再現した施設として平成4年3月に開業したが、巨額の初期投資を回収できず、15年に会社更生法の適用を申請。野村ホールディングス傘下の野村プリンシパル・ファイナンス(解散)の支援で再建を目指したが頓挫し、21年ごろには閉園の危機にあった。

HISの支援で業績を回復したが、28年の熊本地震以降、入場者数が伸び悩むなど成長は鈍化。HISは30年にも、中国・上海の投資会社から出資を受け入れる方針を表明したが、交渉の条件が折り合わず、中止した経緯がある。

HTBは、九州の観光業を牽引(けんいん)する施設だけに、外資系企業への売却を疑問視する声はあるが、九州の西端の地で集客力を維持するのは難しい。新たな経営主体で営業を継続できるか、新たな運営ノウハウ導入などで業績を上向きにできるか、多くの関係者が動向を注視している。(一居真由子)

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