亡くなった安倍晋三元首相を惜しむ声が海外で絶えない。あの痛ましい銃撃事件の直後、米バイデン大統領は「世界にとっての損失」と述べ、インドのモディ首相は「世界的な政治家であり、卓越したリーダーだった」と述べた。米国、インド、ブラジル、台湾などは国としての服喪や公的機関での半旗掲揚を行った(日本は遅れて首相官邸で半旗を掲げた)。
海外メディアでは安倍氏が首相に就任した当初、「歴史修正主義者」などと呼び、ナチスのように危険視する傾向もあったが、いまやそんな論調はどこにもない。むしろ、安倍氏のビジョンや政策に深い理解を示している。
米紙ニューヨーク・タイムズは9日付で安倍氏の伝記も書いた政治評論家のトバイアス・ハリス氏のオピニオンを掲載した。安倍氏を「物事を小さく考えて満足する政治家ではなかった」と評価し、中国の覇権拡大や北朝鮮の核開発などを念頭に「彼は日本が国家間の激しい競争にさらされていると捉え、政治家の使命は何よりまず、国民の安全と繁栄を確保することだと信じていた」と称えた。
実際、安倍氏はそうした信念のもと、日本が同盟国の軍隊を支援できるよう集団的自衛権の限定的な行使を可能にし、長期に及ぶ日本経済の停滞を解消するために「アベノミクス」を進めた。この「より強い日本国家」という安倍氏のビジョンには日本国内でも反対があったが、ロシアのウクライナ侵攻などで、正しかったことが証明された。ハリス氏は「安倍氏が亡くなった今、日本人はようやく彼のビジョンに賛同するようになっているかもしれない」「危険な世界で国を守ることができる『強い国家』という彼のビジョンを国民が理解し始めたかもしれない矢先に逝った」と書いている。