韓国・現代自動車が、日本が世界に誇る千年の都・京都の攻略に乗り出す。8月からタクシー大手エムケイ(京都市)に電気自動車(EV)「IONIQ5(アイオニックファイブ)」を導入。令和4年度中に50台まで増やす予定だ。日本有数の観光地・京都はEVをアピールする格好の舞台だが、新型コロナウイルスの新規感染者の全国的な急増が観光客の回復を妨げる可能性もある。「韓流EV」が日本市場の開拓を急加速するのは容易ではなさそうだ。
最大の決め手は快適な後部座席
京都市は低炭素社会の実現に向けて温室効果ガスの大幅削減などに取り組む「環境モデル都市」として、タクシーやバスなどの公共交通機関でEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の導入を進めている。
エムケイはすでに、保有車両の2%に当たる18台のタクシーをEV化。EV比率は令和7(2025)年に30%にまで高め、12年に100%達成を目指す。4年度には各営業所への急速充電器の設置を拡充する予定だ。
IONIQ5は今年5月に日本国内で発売され、1回の充電で走れる距離は618㌔。騒音や振動も非常に少なく、長期間運転でのドライバーの疲労も軽減できる。
エムケイが最重要視したのは、後部座席の空間の快適さだ。「欧州で非常に評価が高い」との前情報を得て試乗した結果、「乗客に提供する価値観に非常にマッチする」と判断し、導入を決めた。
「第7波」急拡大、観光客回復見通せず
現代自とエムケイは「京都を走るEVタクシーの新しい顔」として売り込みたい考えだが、コロナ感染再拡大は重大な懸念材料だ。
オミクロン株の新たな派生型「BA・5」への置き換わりによる流行「第7波」の急拡大が止まらず、全国で15万人超の新規感染者が報告されるなど深刻な状況が続く。観光客がコロナ禍前に回復できる時期は見通せない。
現代自は平成13(2001)年に日本の乗用車市場に進出したが、販売不振のため、わずか8年で撤退。今年から、EVや燃料電池車(FCV)「NEXO(ネッソ)」に特化する戦略に転換して再参入した。
コロナという難敵が立ちはだかるなか、「リベンジ」を果たせるか注目される。(宇野貴文)